はあちゅう語る「夢を偽る副業ファーストの人」 普通の人生でも「サードドア」で幸せになれる
SNSを見ているような物語だなとも感じました。従来のビジネス本や自伝には、何か課題があって、失敗して、でも解決のコツがあって、大団円という起承転結のパッケージがあるものですが、『サードドア』は、本人が体験したことを読者も体験するという本です。誰かに会ったところで人生は変わらないとか、本人が語らないところから読み取れるものもあって、現実感があります。
アレックスの感覚は、SNSで話題になった「レンタルなんもしない人」さんと近いかなとも思いました。
「レンタルなんもしない人」さんは、彼自身にすごく大きな夢があって、それをみんなが応援する従来型のインフルエンサーとは違い、彼を取り巻くストーリーや、そこから読み取れる大勢の人を通して見る「社会」の味わい深さが魅力となり、フォロワー数が増えていった側面もありますね。その結果、彼自身が知名度を得て何者かになっていくところが「今」っぽいな、と思いました。
現代的な傾向として、こういった「人メディア」という視点で読めるものが、面白く受け入れられるのかもしれませんね。
新しい時代の幸せの形
アレックスのような特殊な経験を経た人は、一発屋と化してしまうか、もしくは、この経験から自分に足りないことを得て、新たなキャリアを築いていくか、分かれ道があるのだと思います。でも、決して彼がすごいキャリアを築き、ウォーレン・バフェットのようになることだけが成功ではないと私は思っています。
例えばアレックスが、この先、田舎で子どもたちに囲まれる普通のお父さんになったとしても、ハッピーエンドだと思いますよ。でも世の中は、そういう人生を選んだ人のことを、すぐ「あの人は今」とか「最近見なくなった」なんて指を差して、さも落ちぶれたかのように表現してしまいます。
これからの時代は、「特殊な経験を経たうえで、僕は普通の人生を選ぶことにしました」というような人生も、決して失敗ではなく、1つの幸せの形だというふうに受け入れられてほしいと思います。
すごいことを成し遂げた人ほど、その成功が後にプレッシャーやコンプレックスにもなりえます。学生時代にキラキラしていた人だって、会社に入って普通に働く、いわゆる「平凡」と呼ばれる人生になっていくのがリアルですし、それが幸せでもあります。人は業績だけに目が行きますが、リアルな人生はそんなにドラマチックでもないですし、観客がジャッジすることでもありませんから。
読み終わった今、アレックスがこの後どうなっていくんだろうと思いますし、そんな物語の続きを想像させてくれるのが『サードドア』という本ですね。
(構成/泉美木蘭)
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