43歳漫画家「死の淵を2度も経験した」壮絶人生 ある日、障害者になった男が語る心の拠り所

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運が悪かったと言えば、それまでかもしれない。しかし、損害保険料率算出機構の「2017年度自動車保険の概況」によれば、任意自動車保険および自動車共済に加入していない自動車の割合は、約12%に上る。1日あたり1200件もの交通事故が発生している国内状況において、およそ1割。1日に事故を起こす約120台は保険未加入だと考えると、対岸の火事とは言い切れない。

輪をかけて、サシダさんが脳腫瘍を患っていたことで、自賠責保険の際、健常者に比べると「障害があった」と判断されたことで、通常の金額よりも少なく支払われたことも精神的な負荷となった。例えるなら、10から5になったのではなく、8から5と判断されたため、差分が少なく、その分、支払額も減少したというわけだ。この自賠責の審査には、なんと1年以上もかかったという。

「無事に脳腫瘍の手術を終え、先生から後遺症はないと診断されたにもかかわらず、7年後に担当医でもない人から“障害者だった”と認定される。何をもって障害と見なすのか、本当にあいまいだと感じました」

死活問題である「障害等級」の違和感

その違和感は、障害等級にも感じると話す。

「母は股関節周囲の骨を骨折して以降、片側を人工関節に置き換えています。認定基準が変更される平成26年4月以前に手術を行っていたため、母の障害等級は、僕よりも重い3。ところが、杖がなくても普通に歩けるんですね。障害等級は、高低によって受けられる福祉サービスの内容が変わってくるため死活問題です。僕よりも手厚い福祉サービスを受けることができる、障害等級3である母に助けてもらったりすると、訳がわからなくなります(笑)。当事者になったからこそわかるのですが、ざっくりとした枠組みの中で障害等級を決めるのではなく、個人の生活環境や不自由さによって審査をすることはできないものかと、いまだ釈然としないんですよ」

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