43歳漫画家「死の淵を2度も経験した」壮絶人生 ある日、障害者になった男が語る心の拠り所
「ほかのアシスタントと比べると、間違いなく仕事ができていない。左手が自由に動かないので、ものを抑えることもままならない。本当に福本先生には、感謝しかないです。もし、利き手の右腕が動かなかったらと思うとゾッとします」
体が不自由になったことで、障害者手帳の申請も必要になる。書類などは病院が用意するが、手続きは当人が行かなくてはいけないため、「家族や友人のサポートなしでは無理でした」と振り返る。
「想像していた以上に、社会生活で不自由を感じたため、精神面が追いつかず、メンタルヘルスクリニックに通うようになってしまって。原因は、体が動かないことだと自覚しているので、少しでも気持ちが楽になる薬を処方してくださいとお願いしていました。『動け!』と脳から発信しているはずなのに、思うように動かない。今までできていたことができない。自分の状況を知らない人がいる環境に投げ出されると勝手が違う……こんなに不安になるとは思っていなかったんですよね」
「被害者に苦労強いる」ひき逃げ事件
このとき、サシダさんはひき逃げ事件の刑事裁判中でもあった。犯人が見つかるも、サシダさんを跳ねた車は、自動車保険未加入。つまり、保険会社からの損害補償を受けることができないことを意味した。本来であれば、重度の障害が残るような事故を引き起こしているため、多額の損害補償金を受け取ることができるのだが……。
「未加入に加え、刑事裁判を経て、加害者とその家族に支払い能力がほとんどないことが明らかになりました」
支払い能力がない。一聴すると加害者に経済的余裕がないように思えるが、そうではなかった。
「加害者の親は、都内に持ち家を持つ状況でした。さらに、『親子の縁は切ったから賠償金の支払いを補助するつもりはない』と言い、刑事裁判にも来ませんでした。そのような親ですから、加害者本人も賠償金の分割支払いに対して、一回目から遅延が発生するという、悪質な態度を繰り返しています。賠償命令の有効期間は10年ですから、その期間内に賠償金額を支払えない場合は、被害者である僕が再び裁判を起こして、期間の延長を求める必要があります。なぜ被害者である自分がここまでしなければいけないのかと、気が遠くなりました(苦笑)」
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