有森裕子と松野明美、因縁の選考で秘めた胸中 バルセロナ五輪マラソン代表争いを振り返る
MGCへの出場権を得るためのレース(参考レース)があることや、基準となる順位やタイムが明確になったことを、有森は評価している。
「選手にも選考する人にも責任がある中で、きちんと納得した結果を出そうというのが、今回のMGCの意味なのかと思います」
有森が言うように、選手自身の責任という側面が強くなったことで、真剣勝負の醍醐味を存分に味わうことができる。この選考基準が続くかぎり、有森や松野のような苦しみを背負う選手が出てくることは、なくなるはずだ。
有森さんもきつかったんだなって
2010年、2人が再会した最後に松野は有森にあるお願いをした。
「五輪のメダルが見たい」
この日のために、有森はバルセロナ五輪の銀メダルを持ってきていた。それを手にした松野は、絞り出すようにして言った。
「このメダルを見て、有森さんもきつかったんだなって。自分だけじゃなかったんだなって。自分ばっかり苦しいのかなって思っていたんですけど」
有森は「みんなそうだと思うよ」と返した。バルセロナ五輪の代表枠を争ったふたりとは思えないほどに、清々しい再会だった。
(文中敬称略)
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