有森裕子と松野明美、因縁の選考で秘めた胸中 バルセロナ五輪マラソン代表争いを振り返る

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MGCへの出場権を得るためのレース(参考レース)があることや、基準となる順位やタイムが明確になったことを、有森は評価している。

2人で並んで走った有森と松野。『マラソングランドチャンピオンシップ~東京五輪代表を懸けた運命の決戦へ』はTBSテレビ系列全国ネットで9月11日(水)よる8時~10時に放送(写真:TBSテレビ)

「選手にも選考する人にも責任がある中で、きちんと納得した結果を出そうというのが、今回のMGCの意味なのかと思います」

有森が言うように、選手自身の責任という側面が強くなったことで、真剣勝負の醍醐味を存分に味わうことができる。この選考基準が続くかぎり、有森や松野のような苦しみを背負う選手が出てくることは、なくなるはずだ。

有森さんもきつかったんだなって

2010年、2人が再会した最後に松野は有森にあるお願いをした。

「五輪のメダルが見たい」

この日のために、有森はバルセロナ五輪の銀メダルを持ってきていた。それを手にした松野は、絞り出すようにして言った。

「このメダルを見て、有森さんもきつかったんだなって。自分だけじゃなかったんだなって。自分ばっかり苦しいのかなって思っていたんですけど」

有森は「みんなそうだと思うよ」と返した。バルセロナ五輪の代表枠を争ったふたりとは思えないほどに、清々しい再会だった。

(文中敬称略)

TBS『マラソン グランド チャンピオンシップ~東京五輪代表を懸けた運命の決戦へ』取材班
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