「児童養護施設」の誤解解きたい20歳男性の覚悟 ようやく見つけた心から安心できる居場所
指揮を執るのは本作が初監督作品となるアメリカ人映像作家、マット・ミラー氏。2人の出会いは6年前、トモヤが施設を通じて参加したNPO主催のキャンプに、マットがスタッフとして参加したことだった。
通常、18歳以下の児童養護施設の子どもたちは、親権を持つ親の同意書が必要となることもあり、こういったドキュメンタリーに出演することは難しい。しかし成人したトモヤは、児童養護施設の子どもたちを代表し、被写体となることに同意した。
「知り合った人に、自分が児童養護施設で暮らしていると言うと、“どんな悪いことをしたの?”と聞かれることがあるんです。施設がどんな所か知られていないとずっと思っていました。でも、中にいる子どもたちが声を上げることはできません。誤解を解いて、実態を知ってもらうためにも、誰かが声を上げることが必要だと思い、出演を決めました」
震災で祖母と家を失う
トモヤは2歳の頃から、福島県で漁師の祖父母と暮らしていた。しかし2011年3月に起きた東日本大震災で、祖母と住んでいた家を1度に失った。
震災から3週間が経った頃、数回しか会ったことのなかった母親がトモヤを迎えにやってきて、以来トモヤは、右も左もわからない東京の母親の家で、母親と、母親の新しい夫、その子ども2人と一緒に5人で暮らすこととなった。
ところがほどなくして、両親からのネグレクトと虐待が始まった。その異変に学校の教員が気づき、2012年9月からトモヤは東京の児童養護施設で暮らすようになった。
「もともと東京は人が多くてあんまり好きになれなくて。新しい中学にもなじめず、不登校ぎみでした。そんな中で児童養護施設は、ようやく見つけた、心から安心できる居場所でした。中には厳しい職員さんもいたけど、施設の人たちはみんな優しい、家族みたいな存在でした」