皆さんの周りに、こういうインパクトのある服を着ている方はたぶん少ないことでしょう。せいぜい、こういう服はテレビや雑誌の世界のはなし、というのが正直なところではないでしょうか。そして、それはある意味、当たっています。
というのも、実際はこれらのすべてが売り物というわけではなく、一部の服は、あくまでもショーという舞台で見せるための服。言い換えれば、エンターテインメント性の高い服で、実売を目的とした服ではないのです。
ランウェイという名のプレゼンショーション
そもそも、ファッションショーの原点は、ブランドの新作発表会であるとともに、受注会でもありました。ショーに招待されたVIPや顧客は、実際に服を着たモデルをみて、オーダーする。ところが、月日を経る間に、ファッションビジネスはオートクチュールからプレタポルテへ移行し(詳しくは次回に)、規模も大きくなり、受注会は後日別の場所で行うようになります。
一方、ファッションショーは、新しいコレクションを発信する場として、メディアを通じて広く世界に向け発信され、注目を集めるようになりました。そして、新しいトレンドやブランドイメージのプレゼンの場としてますます進化していきます。
それに伴い、短いショーの中で、いかにブランドの新しいコレクションをアピールするか。各ブランドはしだいに競うように、舞台演出などでさまざまな趣向を凝らすようになります。
あくまでも、見せるための服
そうなると、各ブランドは“売る”という大前提を掲げながらも、同時に“見せる”ということを明確に意識し、ランウェイという舞台でストーリーを展開します。そこで、ファッションショーに合わせた服=ショーのための服(ショーピース〈show piece〉またはコレクションピース〈collection piece〉)と、実際に売るための服(コマーシャルピース〈commercial piece〉)の両方が存在するようになるのです。
これが、ファッションショーの服のからくりです。つまり、ファッションショーの服は、すべてが売るための服、着るための服ではないのです。
ファッションショーと服の関係
理想論を言えば、ファッションショーとはデザイナー(デザインチームの場合も)が服の可能性に挑戦し、新たなクリエーティビティを発表する場です。
斬新で、見たこともないような服を生み出し、世の中に衝撃を与え、社会現象を起こす。そういうパワーを得て、ファッションは進化し続けてきました。
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