アメリカの直輸入物に目覚める
楠木:この対談は、私がふだんから関心を持っている経営者の方々の「好き嫌い」を聞いていく、というものです。「良しあし」ではなく、あくまでも「何が好きで、何が嫌いなのか」をお伺いしたいと考えています。
そもそも重松さんがなさってきたファッション、特にセレクトショップというビジネスは、重松さんの好き嫌いと深くかかわっていると思うのですが、その端緒からお伺いしていきたいと思います。重松さんは、小学生の頃からアメリカのファッションや文化に興味を持たれていたそうですが、そのきっかけは何ですか?
重松:私は逗子で生まれたのですが、アメリカ軍の居留区があったんですね。そのうちの一軒で、私の姉が英語を教えてもらう代わりにベビーシッターをすることになり、アメリカの洋服が手に入るようになったのです。
楠木:何年頃のお話でしょうか。
重松:私は1949年生まれですので、50年代の後半ですね。
楠木:当時、日本ではどんなファッションが主流だったのですか。
重松:おしゃれな人は、アメリカのファッションにあこがれれていたと思います。たとえば、当時はVANが全盛の頃でしたし。ただ、日本人の体形に合わせた服だったので、アメリカ人が着ているものとはずいぶんと違っていました。
楠木:具体的には、どんな点が違っていたのでしょう。
重松:日本人の体形に合わせた服でした。アームホールが狭く、今で言うスリムフィットに近いのですが、着心地がちょっと窮屈なんです。一見、同じようなデザインでも、姉がアメリカから送ってくれる服とは、着心地がまるで違う。鏡に映したときのシルエットも全然違いました。シルエットだけはアメリカ人みたいな雰囲気。顔は完全な日本人ですけど(笑)。
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