セレクトショップは好き嫌いで経営できる?

ユナイテッドアローズ 重松会長の好き嫌い(上)

セレクトショップの醍醐味

楠木:セレクトショップって、好き嫌いで判断されたことがビジネスとして成立しやすい業態だと思うのですが、自分の好きなものだけを売るというわけにはいかないと。

重松:いろいろな意味で、バランスを取ることが大事なのだと思います。ニュートラルになって、ビジネスに必要な判断をしていくという。

楠木:そこが、ユナイテッドアローズが、唯一、株式上場をしている国内最大のセレクトショップに成長した理由なのでしょうか。

重松:どうでしょうか。

楠木:セレクトショップは、経営者の好き嫌いでビジネスが成立する部分が多分にあり、それだけでも、ある程度の成功が収められる業態だと思うのです。また、好き嫌いで成立できれば、規模の拡大を追求しなくても、経営者の満足度は高い。実際、そうして続いているショップというのは数多く存在しています。重松さんの会社を大きくしようというモチベーションは、どこから来ているのですか。

重松:私が考えている商売の醍醐味というのは、3つあるんです。ひとつは、それまで日本になかったものを海外から持って来て紹介する。

楠木:オーソドックスなセレクトショップのあり方ですね。

重松:そうですね。2つ目は、今までよりも高いパフォーマンスが発揮できるものを、自分たちが作って提供する。これはオリジナル企画商品になります。3つ目は、そうしたオリジナル企画商品の中から、デザインを変えずに量を拡大することができる商品を生み出すことです。

楠木:それはどんな商品なのですか。

重松:たとえば、デザインはほぼ同じなのですが、素材を変えることによって通年商品になる、といったようなことです。

楠木:定番商品ということでしょうか。

重松:それに近いですね。集中して売れるというものではなく、競合他社から見ると、「あそこのあの商品はいつも置いてあるけど、なぜだろう」という程度のもので、売れているのかどうか、外からは判然としない商品です。でも、実際は着実に売れている。私たちは、そういう商品を「ストック」と呼んでいます。

楠木:そのストックを生み出すことも醍醐味なのですね。

重松:ファッションですので、当然、はやりすたりはあります。ストックになった商品でも、数年後には店頭から消えるものもありますし、また、デザインも少しずつは変えています。だから、私たちはストックを、「進化する定番」とも呼んでいます。そうした商品が全体の売り上げの50%を占めると、会社としてはかなり経営体質が強くなります。ストックをどれだけ積み上げられるかが、経営的には大事になってくるのです。

楠木:なるほど、そこに重松さんのバランス感覚が発揮されてきたわけですね。

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