楠木:それは東海岸のファッションだったのですか。
重松:西海岸のものも含まれていました。だから、私のファッションの原点というのは、アメリカの東海岸と西海岸ということになります。そうした服はアメ横でも売っていて、高校生の頃にはよく買いに行っていました。アメリカから直輸入したもので、そのあたりからですね、直輸入物に興味が出始めたのは。
楠木:アメリカ直輸入物が好きだったのは、何歳くらいまでですか。
重松:18歳くらいから、趣味が変わりました。当時、パリのサンジェルマンのファッションが盛り上がっていて、その系統に流れたんです。「サンジェルマンルック」と呼ばれていました。デザイナーでいうと、イブ・サン・ローランとかですね。オートクチュールのテイストが盛り込まれたものです。当時は、平凡出版(現マガジンハウス)から『平凡パンチ』という雑誌が出ていて、そこで紹介されたりしていたのです。
楠木:そのスタイルは長く続いたのですか。
重松:20歳くらいになると、また変わりました(笑)。当時、アメリカでヒッピーブームが起きるんです。「反ベトナム戦争」といったメッセージを掲げて、ドロップアウトをして、アウトローな雰囲気を出すのがファッションにも入ってきました。長髪にパンタロンとか、そんな格好です。そして、1990年になると、ラルフ・ローレンを筆頭としたニューヨークファッションになっていきます。東海岸ですね。その後は、またイギリスに戻ったりして、ヨーロッパとアメリカを交互に行き来している感じです。私のファッションの変遷はこんな感じです。
楠木:「ファッション」というからには、定義からして移り変わるものですね。今はどんなスタイルに興味を持たれているのですか。
重松:18歳のときに影響を受けた、パリのサンジェルマンルックの焼き直しというか、それに自分なりの味付けをしている感じですか。
楠木:それは、ユナイテッドアローズで売っているのですか。
重松:売っていません。私は、個人的に作ってもらっています。
楠木:そういう自分の欲しいものを作って売る、ということはしないのですか。
重松:以前はやっていたのですが、そういうものって、この35年、売れた試しがないんですよ(笑)。
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