船橋:RUSIは国防省の直轄ではないですよね。
鶴岡:組織的には完全に独立していますが、面白いのは、元政府高官をシニア・アソシエイト・フェローとして委嘱して、RUSIの肩書で世界に派遣したりしていることです。
RUSIの特権
有名なところですと、元MI6(イギリスの諜報機関)長官のジョン・スカーレットさんなどがいます。RUSIの肩書で台湾やベトナムなどを訪問し、イギリス政府が表立ってはやりにくい協議を、政府の代わりに行ったりしています。ある種の別働部隊で政府の役割を補完しているんです。
そうした元政府高官や一部のRUSI幹部は、イギリス政府のセキュリティークリアランス(秘匿情報を扱う政府職員の適格性の確認)を持っています。つまり、必要に応じて政府の機密情報を扱うことができるわけです。日本ではちょっと考えられない制度です。
船橋:チャタム・ハウス(RIIAの俗称)には、かつて歴史家のアーノルド・トインビーのような巨人がいて、非常に大きな仕事をしましたが、今はどうですか。
鶴岡:いわゆる大物はいないかもしれませんが、それぞれの専門分野では活発に研究していると思います。
『インターナショナル・アフェアーズ』誌は、かつては季刊でしたが、最近のトレンドで隔月刊になっています。刊行回数は増えてもクオリティーは維持されていて、それが強いのだと思います。実際、査読付き論文の業績としてカウントされ、アカデミックにも評価されている雑誌です。そういう雑誌をフラッグシップとして持っているのは大きな資産です。『RUSIジャーナル』誌もIISSの『サバイバル』誌も同様です。
船橋:相当高いレベルの雑誌をフラッグシップとして維持できるというのが、強みですね。そのためにスタッフに専門のエディターを採用していますよね。
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