安倍首相、閉じない「籠池地獄」の釜のふた 佐川氏喚問は「核心」証言拒否で逃げ切ったが
桜満開の季節に国権の最高機関で行われた「証人喚問」は、大方の予想どおり「事実上の空振り」(自民長老)に終わった。政権を揺るがす財務省の「森友文書改ざん」事件について、当時の理財局長として証言台に立った佐川宣寿前国税庁長官は、安倍晋三首相や昭恵夫人ら政治側の関与を明確に否定する一方、「誰が」「なぜ」という事件の核心部分は「刑事訴追のおそれ」を盾に証言拒否を貫いた。喚問結果を受けて「政治の関与という疑惑が晴れた」と胸を張る政府与党幹部に対し、野党は「疑惑はさらに深まった」といきり立つ。
佐川氏喚問が終わったことで、年度末の国会は28日夜の参院本会議で2018年度予算が成立、与党は国民生活に影響が出かねない予算関連日切れ法案の年度内成立も目指す。ただ、国民の多くは「疑惑解明はまったく進んでいない」と受け止めており、野党側も「絶対、幕引きにはさせない」(共産党)と昭恵夫人を含めたさらなる証人喚問を要求している。
政官界やメディアだけでなく、多くの国民の視線を釘付けにした証人喚問だが、同時進行での世界的大ニュースとなったのが、金正恩朝鮮労働党委員長の電撃訪中による習近平中国国家主席との中朝首脳会談だ。これには、「世界が激動する中で、国会が証人喚問ごっこなどに熱中するのは国益を損ねる」(財界首脳)との声も広がるが、1年以上にわたって1強首相を引きずり込んだ"籠池地獄"の釜の蓋は、簡単には閉じそうもない。
証言次第で内閣が飛ぶ「平成の大事件」のはずが
佐川氏喚問は、財務省による学校法人・森友学園との国有地取引に関する決裁公文書改ざん事件の真相解明が目的で、森友問題での国会証人喚問は、1年前の籠池泰典・前森友学園理事長(勾留中)に次いで2人目。憲法62条に規定された衆参両院の国政調査権に基づくもので、証人が虚偽の証言をした場合は偽証罪に問われるだけに、佐川氏の証言で真相解明が進むとの判断から、衆参両院予算委員会が全会一致で議決した。
佐川氏は新聞報道などで森友問題が表面化した昨年2月上旬以降、国有地取引を担当する財務省理財局長として国会審議で野党追及の矢面に立ち続けた。その後、昨年7月に国税庁長官に昇進したが、3月2日の朝日新聞報道を受けて財務省が認めた公文書改ざん事件の当事者だったことなどを理由に同長官を辞任した経緯がある。
小泉進次郎自民党筆頭副幹事長が「平成政治史に残る大事件」と評したように、今回の改ざん事件は、民主主義の根幹を揺るがし、安倍政権の崩壊にもつながりかねない一大スキャンダルだ。佐川氏の証人喚問での証言次第では「内閣が吹っ飛ぶ可能性」(政府筋)もあっただけに国民もテレビ桟敷で息を詰めて見守った。
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