安倍首相、閉じない「籠池地獄」の釜のふた

佐川氏喚問は「核心」証言拒否で逃げ切ったが

27日の喚問は、午前が参院、午後が衆院で実施され、合計で4時間20分に及んだ。補佐人の弁護士を伴って証人席に座った佐川氏は黒のスーツ、濃紺に白のストライプのネクタイを締め、時折目をしばたたかせるなど緊張した表情で与野党議員からの尋問を受けた。

しかし、冒頭の参院予算委員長による総括尋問で、「改ざんは、いつ、誰が、何の目的で」と核心の証言を求められると、即座に「刑事訴追のおそれがあり、答弁を差し控える」と丁寧だが毅然とした口調で証言を拒否した。ただ、改ざん事件での自らの責任については「ひとえに責任は私にある」と深く頭を下げた。

証人喚問劇はこの導入部で流れが決まった。与党、野党の順で進んだ尋問に対し、佐川氏は(1)(改ざんは)すべて理財局の内部で行われ、担当局長だった私に責任がある、(2)首相や首相夫人、政治家の関与は一切ない、(3)首相秘書官も含め内閣官房の関与もない、などと断定的な口調で証言した。その一方で、改ざんの指示、時期、動機など具体的経緯については「刑事訴追のおそれ」を理由に一切の証言を拒否した。

首相の「議員も辞める」答弁の影響を否定

野党側が繰り返し追及した決裁文書から昭恵夫人の名前や言動などが削除されていたことに関しても「刑事訴追のおそれ」を理由に証言せず。「関係していたら議員も辞める」との首相答弁については「政治的な思いを述べられた」との感想は語ったものの、自らの答弁への影響については「その前後で答弁は変えていない」との表現で否定した。その一方で佐川氏は、「交渉記録は廃棄した」との昨年の国会答弁について、「財務省の文書管理規則の内容に沿って答えた」と釈明し、「丁寧さを欠いた」と陳謝したが、虚偽答弁との追及には「虚偽という認識はなかった」と開き直った。

佐川氏のかたくなな証言ぶりにいらだつ立憲民主党など野党6党は、喚問の事前調整に沿って、尋問者が手を変え品を変えて、核心部分での証言を引き出そうと試みた。しかし、佐川氏は「訴追のおそれ」の一点張りで、微妙な追及については補佐人と相談して証言を拒否するという「鉄壁の守り」(自民幹部)で追及をかわし切った。6党は事前に大阪拘置所に出向き、勾留中の籠池被告と接見して、「新たな喚問材料を得た」などと語っていたが、喚問では「隠し玉」も出せなかった。

27日の佐川氏証言は「ほとんど政権側が想定していたストーリーどおりの内容」(政府筋)となり、自民党の二階俊博幹事長は喚問後「首相をはじめ政治家がどう関わったかが焦点だったが、幸いになかったことが明白になった」と強調。森山裕国対委員長は「首相夫人が関与していないことがはっきりした」として野党が求める昭恵氏の証人喚問も応じない姿勢を明確にした。

野党側は「佐川氏喚問は疑惑解明の入口」(立憲民主党)と6党が結束して政権攻撃を強める構えだが、28日の予算成立によりその後の国会審議は衆参予算委などの追及の場が大幅に減る見通しだ。このため、自民執行部は「大きなヤマは越えた。後半国会は重要法案の審議に集中できる」と安堵する。ただ、自民党内でも石破茂元幹事長が「極めて異例の証人喚問だった。国会で第三者を交えた調査を判断すべきだ」と第三者機関としての調査委設置の必要性を強調するなど、「これで幕引き」との執行部の姿勢に疑問を呈した。さらに党内には「証言拒否で国民の批判は増すばかり」(若手議員)との不安も広がっている。

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