安倍首相、閉じない「籠池地獄」の釜のふた

佐川氏喚問は「核心」証言拒否で逃げ切ったが

佐川氏は苦学して東大経済学部から大蔵省(現財務省)に入省した苦労人。新人時代から几帳面で軽いフットワークの仕事ぶりが上司から評価され、同僚からは「佐川急便」とのあだ名をつけられていたという。ただ、「上司には必死に仕えるが、部下には厳しかった」(財務省同僚)との指摘もある。数年前まで佐川氏の上司だった同省OBは「財務省職員の間には、仕えたくない厳しい上司をランク付けした"恐竜番付"があり、彼(佐川氏)は西の横綱だった」と苦笑交じりに語る。このため霞が関では「怖い上司だから、部下が忖度したのでは」との見方も広がる。

佐川氏が喚問で「すべては理財局内部の話で、その最高責任者は私」と証言したのは「自分がすべてをかぶるとの強い意思表示」(共産党)とみられ、野党側は「政権や財務省という組織を守るため、自らが人身御供となる覚悟」(同)と受け止めている。佐川氏が喚問に先立って読み上げた「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、何事も付け加えず……」とする宣誓文についても、野党側は「できるだけ隠し、都合のいいことだけ真実として述べ……書き換える必要がある」と苦々し気に揶揄する。

ただ、今回の証人喚問を経て、政府与党の思惑どおり、後半国会の審議が順調に進む見通しはない。今後、与党が次の証人喚問を拒否し続ければ、さらなる内閣支持率の低下につながり、政権の体力が日を追って低下することは避けられない。しかし、新たに関係する財務省幹部らの証人喚問を実施しても、「結果は佐川氏喚問と同じ」(自民国対)との見方が支配的だ。その場合「行き着くところは昭恵氏招致」(同)となるが、首相が認める可能性はほとんどない。となれば、「森友政局は出口のないまま政権を揺さぶり続ける」(自民長老)ことになる。

次のターニングポイントは「地検捜査終結」

そこで注目されるのが大阪地検の捜査の進展状況だ。政府部内では「当初は年度末だったが、改ざん事件で捜査が延び、終結は早くとも5月連休前後」(司法関係者)との見方が広がる。首相らが指示した財務省内調査は「司法の捜査結果待ち」(財務省)のため、次のターニングポイントは地検捜査終結とその結果、となる。財務省は「仮に連休明けに捜査結果が出れば、まずそれに基づいて佐川氏も含めた関係者の処分を決め、その上で政府としての再発防止策を策定する」(政府筋)との方針とみられるが、今国会会期中にすべてが終わるかどうかは微妙だ。

このため、自民党内からは「麻生財務相の進退は再発防止策の策定後で、今国会中の辞任はない」(国対幹部)との声も出る。また、首相の責任問題についても、首相サイドは「会期末に野党が提出する不信任案を否決して責任論に決着をつけ、総裁3選の準備に入る」(側近)ことを想定している。ただ、捜査結果で、改ざんの指示などの「刑事責任」が財務省理財局にとどまらず、同省中枢部や官邸関係者に及べば、状況が一変して政権危機が現実化する可能性も否定できない。

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