「根性がクソ弱い」チームを立て直す方法

新日鐵住金かずさマジックの改革劇

「選手に嫌われてもいいから、チームを変えようと思った。それをやらないと、自分が監督に指名された意味がない。私がチームからいなくなっても、伝統として残っていくカラーを植え付ける必要がある。人が代わったからチームカラーが変わるのでは、とてもじゃないけど常勝チームなんてできない」

鈴木がまず手をつけたのは、選手たちの負け犬根性をたたきのめすことだった。試合で敗れるたび、「負けたら許さない」と徹底的に走らせた。だが、ムチをたたくだけでは、考え方は変わらない。そこで行ったのが、自分たちの存在意義を知らしめることだ。

「君たちが野球道具を買ってもらっているのは、誰のおかげだ? もっと掘り下げれば、デートやパチンコをしているおカネは、誰が稼いでくれたものだ? 君たちは利益を生まない仕事をしている。だからこそ勝って出資者に満足してもらわないと、このチームが存在する意味はない」

2年で3分の2を入れ替え

企業が社会人野球チームを持つ大義名分は、福利厚生のためだ。しかし、長らく続いた不況のあおりを受け、1963年時点で237の企業チームが存在したものの、2013年2月時点で77まで減少。日産自動車やプリンスホテルという名門も活動停止へと追い込まれている。

チームが存続するには、とにかく勝たなければならない。そう突き動かされた鈴木は就任1年目のオフに10人、2年目には9選手に戦力外通告を下した。就任当初はコーチ兼選手を含めて26人で活動していたから、2年間で3分の2を入れ替えた計算だ。それほど大胆なリストラだったが、鈴木は迷いなくクビを切った。

「予選で負けたとき、『今のメンバーの意識を変えようと思っても、時間がかかるから無理』と思った。『かずさマジックを強くしてやる』と思って入部してきた選手じゃなければ、チームを改革しようとしても賛同してくれない。だったら、血を入れ替えるしか手段はない。腐ったみかんは箱から取り出さないと、ほかのものまでダメになる」

新日鐵君津がかずさマジックに生まれ変わった理由は、チーム存続の道がそれしかなかったからだ。新日鐵本社が野球部への支援を減らすことを決定し、かずさマジックは地元で協賛企業を探した。所属選手を雇用してもらい、労務費の負担を願い出たのだ。現在は約20の会社が賛同し、選手と契約を結んでいる。

こうした形態は今後、企業スポーツのあり方として定着していくかもしれない。たとえばひとつの会社に所有されるチームは、役員が「野球部なんて持つ必要がない」となった場合、その一存で休部に追い込まれてしまう。しかし、複数の企業でひとつのチームを持てば、そうしたリスクを回避できる。それこそ、かずさマジックが「広域複合事業チーム」として誕生した理由だった。

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