寿命をも左右する「ペット食」の知られざる実際 獣医師がネスレに転職して働く深いワケ

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――犬のてんかんは、薬では治らないのでしょうか?

薬が万能ではないんです。抗てんかん薬に反応する患者犬は7割といわれています。ですので、3割近くはうまくコントロールできません。僕も獣医師をやっていたときには、すごく困りました。治療法がない患者犬に対して、中鎖脂肪酸を配合したフードを与えると、約7割で発作の頻度が減少したというデータも出ています。薬が効かない犬の7割なので、結構すごいことだと思います。

――そういえば、中塚さんは取り扱うペットフードはすべて試食をしていると聞きました。ニューロケアはどんな味なんですか?

このフードに関しては、お肉由来の味が強い印象がありますね。どんな味なのかは意外と聞かれるんです。展示会や学会にサンプルを持っていくと、病院の先生が食べてみてもいいですかって聞いてきて、その場でポリポリ食べることもよくあります。業界では割と一般的なんです。

――犬や猫が好む味もわかるようになってきたそうですが、どういう味なんでしょうか?

犬と猫で比較するとわかりやすいのですが、犬は酸味を好みます。なぜかと言うと、犬は穴を掘ってそこに獲物を埋めて、後で食べる習性があります。隠している間に腐敗気味になり、少し酸っぱくなることがあります。ですので、犬は酸味を受け入れるように味覚が発達しています。一方、猫は酸味を苦手とします。猫は小鳥やネズミなどを捕らえて食べていて、新鮮なものしか口にしませんので。

栄養学は獣医療現場では軽視されている

――獣医学部を卒業して獣医師として4年間勤務して、そこからネスレに転職をしようと思ったのはどうしてでしょうか?

動物病院に勤務していたとき、一見してボロボロで、毛が抜けてハゲているところがいっぱいあるようなチワワを診察しました。飼い主さんに聞くと、人間の食事の残り物をあげるなどしていて、食事管理がしっかりできていなかったんです。そこで、栄養改善の指導をしたら、2~3カ月で見違えるほどに回復しました。

動物病院の現場では、栄養学に対する意識は薄れがちです。僕は学⽣のときにもあまり学ぶ機会がありませんでしたし、動物病院でも薬で治療することが優先されます。栄養学をしっかりと追求したいと思っていたとき、ちょうどピュリナが獣医師の募集をしていたんです。もともとピュリナは世界に研究所を持っていて、いろいろやっていることを知っていましたので応募しました。

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