飛鳥山公園に今も残る渋沢栄一ゆかりの名建築 晩香盧と青淵文庫内部を360度カメラで撮影

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その渋沢邸は1945年4月の空襲で和館、洋館、茶室などほとんどの建物が焼失してしまうが、この晩香盧、青淵文庫だけは無事に残った。

晩香盧と青淵文庫は今も飛鳥山公園の一画に建っている。晩香盧の外観はイギリスの田舎家のよう。19世紀後半にイギリスで盛り上がったアーツ&クラフツ運動の影響を感じるものだ。

この建物は清水組(現在の清水建設)から渋沢への感謝の意を示すために贈られた。当時の清水組技師長・田辺淳吉が設計し、予算を度外視した最高の材料と手仕事で作られている。一見何気ない建物だが、壁、建具、マントルピースなど、随所に工夫を凝らしたデザインや細かい職人仕事が見られ、設計者の徹底的なこだわりが感じられる。

室内の家具もこの建物のために制作された

外壁にアクセント的に貼られたレンガ風タイルは、微妙に異なる色で構成され、リズム感が演出されている。室内には、網代天井や数寄屋造りに使われる萩の茎の立て簾が見られ、和風建築の要素が取り入れられているのも面白い。また、壁は“錆壁”と言って、鉄粉が混ざり、時間が経つと錆びが浮き出てくる仕上げで、こちらも数寄屋造りに用いられる手法だ。

マントルピースの上の「喜」の文字(撮影:梅谷秀司)

室内の家具も、この建物のために制作されたもので、談話室のテーブルやいすの脚部や背板などに注目すると、デザインや細工のすばらしさに気づく。

照明には鶴がデザインされ、控え室の扉にはめられたステンドグラスには“上昇”を意味する立湧文様、マントルピースの上にはレンガ風タイルで「喜」の文字を描くなど、随所におめでたいお祝いの要素が盛り込まれている。

「晩香盧」の内部(編集部撮影)
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