これだけは知っておきたい「日本の赤ワイン」 「マスカット・べーリーA」の魅力とは

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

 グラスに注ぐと、美しいルビー色で艶々とした色気が感じられます。香りは穏やかですが、しっかりと成熟したブルーベリーやカシスのようなベリー系の香りが主体で、そこにほんのりとスミレなどの小さな紫色の花の香りが続きます。

飲んでみると、アタックがとても優しく、口中にワインがナチュラルに広がっていきます。ほんのりと木樽由来のフレーバーも感じられ、味わいの後半にかけてジューシーな肉のローストを連想させるコクと旨味がやや長めの余韻をつくっています。

まさに上質な日本のワイン

味わいに存在感がしっかり感じられるのですが、通常のマスカット・ベーリーAよりも酸がやわらかいせいか、口に含んでから飲み込むまで、終始やさしく穏やかな印象のままで、上質な日本ワインという感じがします。

このワインを有名人に例えるなら、女優の黒木華さんです。某語学番組では、ナチュラルでキュートな一面も見せてくれている彼女ですが、映画などでの演技はじんわりと味わい深く、主演でも助演でも印象的な表情や演技で、その作品の味わいを支えていると感じています。彼女のキュートな印象と演技の味わい深さが、このワインを飲んだときにパッと頭に浮かびました。

黒木華のようにキュートさと味わい深さを兼ね備えている(イラスト:くぼあやこ)

合わせるお料理は、出汁やみそなどのうま味との相性がいいので、和食とのペアリングでは大活躍だと思いますが、例えば醤油、みりん、酒の味付けにカボスやユズなどを効かせた白身魚の幽庵焼きや、タレで食べる焼き鳥のねぎまとかはバッチリ合いますね。

日本ワインの特徴は、当然、品種特性や造り方によって異なりますが、そのやわらかさにあると私は思います。飲み疲れしなくて、フードフレンドリーな点が海外でも少しずつ評価されており、世界の料理が軽やかで、手軽になっている現在において、日本ワインがワイン業界を熱くさせる日もそう遠くないのではないでしょうか。

杉山 明日香 理論物理学博士、ソムリエ、唎酒師(ききざけし)

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すぎやま あすか / Asuka Sugiyama

佐賀県唐津市出身。有名予備校の数学講師として教鞭を執る傍ら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策の講座を主宰。また東京・西麻布ではワインバー「GOBLIN(ゴブリン)」 を、パリでは日本酒&シャンパーニュをテーマにした和食店「ENYAA(エンヤー)」をプロデュースしている。著書に『ワインの授業 フランス編』『ワインの授業 イタリア編』『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』『おいしいワインの選び方』など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事