「不動産投資」は金持ちほど圧倒的に有利な理由 「利益ゼロの人」「大儲けする人」の大差

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この物件の経費を差し引く前の年間家賃は最大で720万円で、物件の取得価格は1億円となります。1億円の投資で年間720万円の家賃が得られるわけですから、投資利回りは720万円÷1億円で7.2%と計算されます。これは経費を差し引く前の利回りなので、投資の世界では「グロス」の利回りと呼ばれています(これに対して経費差し引き後の利回りのことを「ネット」の利回りと呼びます)。

実際にいろいろな物件を見るようになればわかると思いますが、グロスの利回りが7.2%というのは、それほど悪い物件ではありません。もっと条件の悪い物件はいくらでもありますし、逆にさらに利回りが高い物件の場合、築年が古かったり、駅から遠かったりと、いろいろと難点が見つかることも少なくありません。

つまり、そこそこのレベルの物件を取得できたとしても、それだけでは十分に稼げる手段とはならないわけです。では不動産投資で大きな利益を上げる人は、どのような工夫をしているのでしょうか。

不動産投資がうまくいく人の特徴

それは利回りが高く、かつリスクの低い物件を選び出すことです。不動産に限らず、すべての投資案件に当てはまりますが、利回りが高い投資案件は、リスクも高いというのが一般的です。しかし不動産の場合には、金融商品ほど取引が活発ではありませんから、利回りが高く、一見するとリスクも高そうな物件であっても、実は優良物件だったというケースがまれにあります。

不動産の売り手は、さまざまな事情で物件を売りに出します。安い物件はたいていがそれなりの理由があって安いのですが、中には売り手の資金繰りの事情で売り急いでいる場合があります。こうした物件をうまく見つけることができれば、相場よりも安い価格で入手することができます。

銀行の融資姿勢が価格に影響を与えることもあります。多くの投資家が、銀行からの融資で資金を調達して不動産を購入しています。銀行が最優先で考えることは、その物件が不動産ビジネスとして儲かるのかではなく、借り手がお金を返せなくなったときに、貸した資金を回収できるかどうかです。

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したがって、築年が古いといった理由で売却が難しそうであると判断された場合には、投資用不動産としては魅力的な物件であっても、融資の審査が通りにくい物件というものが出てきます。こうした物件の価格は相場よりも安くなってしまうわけです。

不動産投資で成功する「大家さん」は、目を皿のようにして、こうした有利な物件を探しています。なかなかお目にかかることはないのですが、もし見つけた場合には、すぐに投資を決断します。

そのためには、つねに一定の資金を確保しておく必要がありますし、話を通しやすい銀行をいくつかキープしておくといった措置も重要となります。何より、無数の案件をつねにチェックするという気の遠くなるような作業が求められるでしょう。

加谷 珪一 経済評論家

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かや けいいち / Keiichi Kaya

仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

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