70歳で人生が一変した料理研究家が達した悟り

過去の自分はすべて肯定し若いモンは認める

そして著者が抵抗を感じるもう1つの言葉が、「若いモンには負けていられるか」なのだそうだ。

若いモンには、負けていいんだよ。むしろ負けるのが当たり前。若い人のほうが元気なんだから。情報も持っているし、頭も回るんだから。
どうして、若い人に敵対意識を持たないといけないのか。そうじゃなくて、補佐してあげればいいんだよ。サポートしてあげたらいい。(74〜75ページより)

当然のことながら、時には年の功で止めてやらなければいけないこともあるはずだ。文句の一つも言ってやる必要があるケースもあるだろう。あるいは、人生経験に基づいて話をすべきときだってあるかもしれない。

だが、それは「対抗意識」ではなく、そうであってはいけないということだ。だから著者は、「若い人には、負けたらいい。その代わり、助けてやればいい」という。

明るさの中にある強い発言力

理屈ではなく、自身がずっとそうやってきたというのだ。そして、そうすることで、仕事をしているときも、定年以降も、人間関係がうまくいったと振り返っている。

年寄りは、若い人には負けることになっているんだ。だから、サポート役に回るようにするとうまくいくよ。間違っても、クサしたり、対抗しようとしたりしない。そんなことをしても、何も生まない。
もし、そういう発想がふっと頭をもたげてきたら、自分たちのときはどうだったか、思い出すといい。そんなふうに言われて、どう思ったか。どんなふうに言われたり、されたら、うれしく思ったか。
俺はいつもそれを考える。そうすると、どうすればいいかが見えてくるんだ。(75〜76ページより)

引用部分を見ていただければおわかりのとおり、決して小難しい内容ではない。読書慣れしている人であれば、1時間以内に読了できるだろう。

波瀾万丈の人生からつづられた言葉は、年齢を重ねてきた人にしか伝えることのできない説得力に満ちている(撮影:今井康一)

だが、それでいて、内容がぎゅっと引き締まっている。限られた時間の中で斜め読みしたとしても、重要な言葉が飛び込んできて、心に刺さるはずだ。共感できる文が数多くあるだけに、それが心地よくもある。

今ではすっかり減ってしまった、明るさの中に強い発言力を持つ長老の話を聞いているような気分になれるというべきか。

そして読み終えたときには、「この本は大切にしたい」と思うかもしれない。少なくとも、私は個人的にそう感じた。

実をいうと、読むまではさほど期待していたわけではなかった。だからなおさら、年齢を重ねてきた人にしか伝えることのできない説得力に、はなはだ感服しているのである。

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