70歳で人生が一変した料理研究家が達した悟り 過去の自分はすべて肯定し若いモンは認める

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きっかけは、料理研究家として認められるようになった小林まさみが、自分の料理の本を出すことになったときのことだった。料理撮影のアシスタントが足りないというので、「そんなの、俺がやってやるよ」と手を挙げたのだ。

家の食事や家事はほとんど俺がやっていたからね。しかも息子が結婚するまでは、息子の料理もつくっていたから、調理の手伝いなんてなんでもなかった。ごく自然の成り行きだった。(中略)我ながら、いい働きをしたと思う。そして、なんだかんだと、うまくいった。
スタジオではみんなびっくりしていた。「あのじいさんは、いったい誰だ?」って。
自分で言うのも何だが、俺は実によく働いた。それで、まさみちゃんは思ったらしい。「お義父さんは使い物になる」ってね。
こうして俺は、「息子の嫁の専属アシスタント」になった。(「はじめに」より)

今ではアシスタントを続けつつ、自身の名前でも仕事をしているというのだから大したもの。つまりはそれが、『人生は、棚からぼたもち!』というタイトルのゆえんだ。

過去の自分の人生をすべて肯定する

本書では独自の人生訓を展開しているのだが、一つひとつの言葉にはずっしりとした重量感がある。言うまでもなく、そのバックグラウンドには長く深い人生経験が横たわっているからだ。しかもそれでいて、押しつけがましさのようなものはまったく感じさせない。それどころか、強く共感させられるのだ。

例えば「食べること」についての持論を展開する場面においては、それを人生論にまで結び付けている。

食べることを考えると、いろいろな思い出が浮かんでくる。やっぱり食べることは、とても大事だ。食べることを考えると、幸せな気持ちになる。
そして年を取れば取るほど、昔の思い出は、老後を豊かにしてくれる。喜怒哀楽、全部がね。それは本当だ。
大切なのは、過去の自分の人生を全部、肯定することだ。起きちゃったことなんだから、悔やんだりしない。そうすると、老後が笑って過ごせる。
どんなに悔いたって、あと戻りはできない。
大切なのは、いまであり、これからなんだから。
(63ページより)
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