70歳で人生が一変した料理研究家が達した悟り 過去の自分はすべて肯定し若いモンは認める
「食べることは、とても大事だ」という言葉の背後にあるのは、「いつもお腹を空かせていたし、貧しかった」という自身の経験だ。だから深みを感じさせるのだが、「理解しろ」と読者に共感を強いるようなことはしない。事実を淡々とつづっているからこそ、そこに説得力が生まれるのだ。
ちなみに後半で話を人生にまで広げているのは、この項の前の部分で自らの食べものに関する思い出をつづっているからだ。戦時中の話なのでいい思い出ばかりでもなかろうが、それでも「過去の自分の人生を肯定する」ことの重要性を強調している点こそが重要だ。
当時と現代とではいろいろなことが違っているが、自己肯定が困難な時代でもあるからこそ、この言葉は多くの人の心に響くのではないだろうか。
失敗したら、またやってみればいい
第2章「老後のモットー」で注目すべきは、「老いる」ことについての考え方だ。ここで著者は、「もう年だからやらない」「もう年だからダメ」「もう年だから恥ずかしい」というような“よくある言葉”の問題点を指摘している。
せっかくワクワクするものがあるのに、そんなふうに思った瞬間、すべては消え失せてしまうというのだ。
(69ページより)
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