ハーバードで聞いてみた「デキる子の共通点」 成績優秀者の親が実践する「子育ての公式」
「子育ての秘訣って、教えられるものでしょうか」
ファーガソンは可能だと答え、最近は研究者の間でも、子どもを伸ばす育て方をどう教えるか議論する動きがあると語った。
やがてターシャは、優秀な人の親は特別な子育ての法則、いわば公式を守っているのではないかと考え始めた。その後10年かけて、60人にどう育てられたか尋ねるインタビューを行い、共通点を探した。
話を聞いた相手は記者仲間もいれば、取材先で知り合った人もいた。基本的に自分の判断でインタビューしたけれど、バラク・オバマ前大統領など、ほかの媒体に載せるため取材した相手に、子育ての方法を尋ねたこともあった。
もう1人の著者であるロン・ファーガソンの場合、2009年にハーバード大学の研究室で学生の相談に乗ったことがきっかけだった。修士課程に在籍するキョン・リーは、ロンが研究者として、30年以上関わるケネディ行政大学院で秋期講座を受講していた。気づくと2人は、韓国の文化や教育水準、子育てを話題にしていた。
ロンは以前、韓国出身の学生から、韓国では全国で上位5%以内の成績をとらなければ褒めてもらえないと聞かされていた。ロンには納得できない話だった。学年の上位10%に入っていてもダメだなんて。自分の育ち方と比べると、まったく理解できない。
けれど、韓国育ちの両親をもつキョンにはよくわかった。「テストで99点をとっても、どこを間違ったのと母に聞かれました。90点以上とった子がほかにいなくても」と彼女は語った。
ロンとキョンは考えた。ハーバード大学のほかの学生も、あと1点何が足りなかったか聞かれたのだろうか。人種や民族、社会的地位、貧富の差、国籍によって育てられ方に違いはあるのか。つまるところ、同級生の親はみんな、超難関のハーバード大学にわが子を合格させたのだ。どの子も同じように育てられたのだろうか。
「ハーバード大学育ち方プロジェクト」での子育ての公式
この会話から、ハーバード大学の学部生と大学院生合わせて120人にインタビューする「ハーバード大学育ち方プロジェクト」が生まれた。2009年、ハーバード大学の学生数百人にメールを送り「あなたの成功に両親はどんな役割を果たしましたか」と尋ねるインタビューへの参加を呼びかけた。
その後2年の間に、ほぼあらゆる社会階層の多様な生いたちの学生のエピソードが集まった。
黒人、白人、アジア系、ラテン系、バプテスト派、カトリック、ユダヤ教、仏教、無宗教など。裕福な家庭出身の学生もいたけれど、それ以外が大半を占めた。医師、弁護士、エンジニア、教授の子もいれば、レジ係、バス運転手、料理人の子もいた。
出身地も幅広く、韓国、中国、インドで生まれた学生もいれば、アフリカ、メキシコ、ドミニカ共和国、ジャマイカ、ブルガリアで生まれた学生もいた。とはいえ参加者のほとんどが、全米各地で生まれ育ったアメリカ人だった。