銀座No.1ホステスは「美人ではなくセンス」の人 ビジネスのセンスを磨くコツは「諦めが肝心」
内田:今の話を聞いて思い出したのが、銀座のクラブのナンバーワン・ホステスがどう決まるのか。私の主観も入りますが、ほとんどの店で、ナンバーワンは一番美人とは限らない。
これは私の仮説に反するのでリサーチをしてみたのです。すると、みんな自分は一番美人ではないことを自覚していて、ペン習字を習って手紙作戦をとったり、日経新聞を丹念に読んでビジネスの会話力を磨いたり、誕生日など大事な日を覚えて前後に必ず電話を入れたりと、戦略的に動いていました。一番美人ではないがゆえに、どうしたらナンバーワンになれるかをつねに考え、努力を継続させてきた結果だったのです。
そのように、ある方面のセンスがなくても、別のやり方で補えるセンスがある。
肝は右脳と左脳のシークエンスにある
内田:経営者と話していると、「私は左脳を使うのが得意で、訓練もしてきたが、どうもひらめいたり、感情を駆使して人を動かしたりするのがいま一つだ。どうしたらいいか」と質問されることがあります。
楠木:それは、右脳と左脳が分業可能かという問いに近いですね。だとすれば、その質問への僕の答えは、「分業は不可能」です。つまり、私はロジックが得意だけど、右脳が働かないという人は、本当はたいしたロジックの使い手ではないかもしれない(笑)。
要するに「あなたは右脳派、左脳派のどちらのタイプか」というよくある問いははなから的外れだということです。およそあらゆる知的活動は、内田さんのおっしゃるサンドイッチ構造で、第1ステージの右脳のひらめき、第2ステージのロジックでの検証・分析、第3ステージの腹落ちや感情移入、この一連の流れですね。
言い換えると、ひらめきがないところに、強力なロジックはない。法則や情報や知識を得ているだけで、ロジックとしてはあまり価値がないかもしれないと思いますね。
内田:なるほど。私がBCGで最初に習ったのが、情報にはインフォメーションとインサイト(洞察)があるということです。インフォメーションは事実をいろいろ教えてくれるけれども、インサイトはそこから、ビジネスのチャンスや人の動かし方など、何かを導き出すこと。
それにはある程度の情報が必要ですが、情報だけではほとんど価値がなく、簡単にリプレースされてしまう。それを本当にインサイトにまで高められると、ある種のユニークさになると、最初に叩き込まれました。
今の楠木さんの話では、どちらかというとインサイトは右脳的、インフォメーションは左脳や第2ステージの話だなと感じました。