銀座No.1ホステスは「美人ではなくセンス」の人 ビジネスのセンスを磨くコツは「諦めが肝心」

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楠木:ワクワク・ドキドキや好きなことを仕事にするのは難しいと感じるのは、世の中の労働市場がそもそも、エクセルができるか、英語が話せるか、マーケティング業務の経験があるか、それは消費財マーケティングなのかそれとも産業材マーケティングなのか、というように「スキル」という言語や文法で成り立っているからです。

仕事の中では誰もがスキルという言語で会話をします。これは、労働市場の成り立ちからして仕方ないのですが、問題は、好き嫌いは労働市場の言語や文法ではなかなかわかり合えないということです。

そういう履歴書に書ける能力とは別に、自分の心の中でしかわからない価値をどれだけ豊かな言葉でつづられるか。それが好きなことと仕事がなかなかつながらない時期を乗り切る縁(よすが)や糧になると僕は思います。

諦めるとは「捨てることで明らかにする」こと

内田:明らかにセンスがない経営者や中間管理職に対して、どんなアドバイスをされるんですか。

楠木:そうですね。まず、センスのある人と比べて、自分にはセンスがないことを自覚している人と、自分にセンスがないことがわかっていない人がいます。前者には「センスや右脳、カンは先天的なものではなく、経験の中で練り上げていくものなので、ぜひ意識的に練り上げていきましょう」。後者の方に言うのは「諦めが肝心です」(笑)。

内田和成(うちだ かずなり)/早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より早稲田大学教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行う。著書に『仮説思考』『論点思考』(以上、東洋経済新報社)、『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(編著)、『異業種競争戦略』(以上、日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川oneテーマ21)、『プロの知的生産術』(PHPビジネス新書)などがある(撮影:黒坂浩一)

内田:喧嘩を売っているように聞こえますが、例えば、絵心や音楽について考えてみれば、すごく真実だと思います。私はどうあがいても音楽や絵のセンスはないから、仕事でも趣味でもそちら側は選びません。選んでも楽しくないし、何もリターンがない。

仕事においても、自分が何に向いていて、何が向かないのかをもっと考えたほうがいいわけです。もし与えられている仕事やポジションと自分のセンスがミスマッチしているとわかったときには、どうしたらいいのか。それを考えるのが、本当に自分のキャリアを考えることだと思います。ただ、そういうキャリア論はあまりありませんが。

楠木:そうですね。ただ、僕が「諦めが肝心」と言うのは、実は喧嘩を売っているわけではないんです。僕は頭髪のみならず、割と仏教的な思考をするタイプですが(笑)、仏教の諦めるは、ギブアップすることではない。ある物事を、何か捨てることで明らかにするという意味がありますね。センスの有り無しの手前に方向性がある。全方位的にセンスがある人など存在しません。だから、自分はどこにセンスがあるかを考え、明らかにするというポジティブな意味で諦めろということです。

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