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「方法論やフレームワーク」が実は使えない理由 ビジネスを面白くする「正解のないモヤモヤ」

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  • 内田 和成 東京女子大学特別客員教授、早稲田大学名誉教授
  • 楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授
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内田:そうですね。私が書いた3部作『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』のうちで、今後とも売れ続けるのは『仮説思考』だろうと思います。これはコンサルティング会社がみんなやっていることを通訳して書いただけなので、私のオリジナルとは言えません。一方、私のオリジナリティーあふれる自信作だと思うものはあまり売れない。

例えば、人がどういうときにひらめくかを私なりに因数分解して書いた『スパークする思考』がそうです。楠木先生が『戦略読書日記』でベタ褒めしてくれたのですが、そのときにはすでに紙の本の在庫がなくなっていた(笑)。

それで、今回の『右脳思考』も同じかなと思っていたのですが、少し違いました。経営者の方々から非常に好意的なレスポンスがあったのです。なかには、ここに共感したといった感想を添えた、直筆のお礼状まで届いたのです。これは極めてまれなことです! それで、私がこれまで経営者を見て考えてきたことは、それなりに当たっていたんだなと思いました。

若者が論理思考を好むのは「事後性」の問題

楠木:そこにははっきりとした理由があると思います。『仮説思考』をきちんと読めば、『右脳思考』や『スパークする思考』と通底するところがあるのですが、タイトルを一見すると、「こうやったらいい」という方法論のにおいがする。みんなとにかく方法論、方法モノが大好きなんですね。

楠木建(くすのき・けん)/一橋ビジネススクール教授。1964年、東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(ともに共著、東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(文藝春秋)、『戦略読書日記』(ちくま文庫)がある(撮影:黒坂浩一)

反対に、右脳やセンスというと、若くて経験のない方ほど「それを言ったらおしまいよ」が強くなる。実際に経営していれば、右脳が大切、少なくとも思考と行動の起点になることがイヤでも実体験でわかるので、経営者は「やはりそうだよな」となります。ただし、こういうことは経験がないとわからない。つまり、事後性が強いのです。

内田:年をとって経験してみないとわからないことは確かにありますね。例えば、私が30代の若かりし頃、コンサルティングの仕事では必需品の『会社四季報』の大判が出ました。

大きくてかさばるうえ、値段も高い。こんなものをだれが買うのかと思ったのですが、先輩の堀紘一さんは愛読していました。なぜかと聞くと、「お前も年をとればわかるよ」と言われました。そして後年、老眼になったときに身に染みてわかりました。これも事後性ですよね。

楠木:まったくそうです。僕は世代論を好まないし、若い人、年をとった人それぞれによい悪いはあるので行ってこいでチャラなのですが、一通り経験した人は、若者に対して絶対に優位なところがひとつだけあります。それは、年寄りはかつて若かったけれども、若い人はまだ年をとったことがないこと。

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【本は疑似経験を獲得するツール】

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