「方法論やフレームワーク」が実は使えない理由 ビジネスを面白くする「正解のないモヤモヤ」

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内田:それをやっていると、仕事をやった気になるのでしょう。楠木先生もおっしゃったように、SWOT分析は基本的に「作業」であって、仕事ではない。例えば、戦略をつくる材料にしたり、わが社にどんな強みがあるかを考えるツールとしては使えるけれども、それで目的が達成できるわけではない。そこをごちゃ混ぜにして、勘違いしてしまうんです。

論理はつねに直観/直感を必要とする

楠木:そうですね。内田先生の『論点思考』ではないですが、この手の本を読むときには、法則と論理(ロジック)を分けて考えたほうがいいと思いますね。法則というのは、再現可能なサイエンスです。人によって、場所によって、気分によって違いが出ない。人によらない、これがサイエンスの本質です。

一方、論理が、2つの構成概念の関係を理解するものだとすれば、論理は必ずしも法則ではない。サイエンスほどの普遍性はなくても、十分に論理として使えます。しかし、論理はそれを使う人による。そこが法則と論理の違いです。

内田:説明はついても、本当の因果関係があるかどうか、わからないこともあります。それこそがビジネスだと、私は思っています。

楠木:『右脳思考』で右脳と左脳のサンドイッチ構造について説明がありましたが、左脳か右脳かに二分する話ではないところがすばらしいと思いました。考えてみれば当たり前のことですが、論理はつねに直観/直感を必要とする。

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2つのコンセプト間の関係を考えるとか、これはなぜかという論理を考えるときには、まず最初に無限にあるファクターや構成概念から特定の少数を選び出すわけですが、それは直感がないところでは絶対に作動しません。左脳は駆動の起点において右脳を必要とするということですね。私が『右脳思考』でとくに好きなのは、この辺の思考のメカニズムを論じた部分です。

内田:例えば、ご存知の方も多いように、ビジネススクールで教えているケースメソッドには、基本的に答えがなく、終わった時にモヤモヤが残ります。どうしたらよかったのか結局わからないし、自分がそういう場になったら間違えるかもしれない、と。

ですが、そういう疑似体験ができることに意味があるんです。ビジネスはモヤモヤの中で、どうやって決めて行動していくかが大事ですし、正解がないからこそ面白いのだと、個人的に思います。

(構成:渡部典子)

内田 和成 コンサルタント

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うちだ かずなり / Kazunari Uchida

東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より2022年まで早稲田大学教授。著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)などが多数。

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楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

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くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

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