高齢者の「うつ病」ほど早期治療が必要な理由 女性の「4人に1人」がうつでもおかしくない
その結果かどうかはっきりとはわかりませんが、2012年に「日本人の自殺者数が15年ぶりに3万人を切った」という報道がありました。「不眠」が、実はうつ病の症状の1つだということを強調した結果ではないかと思います。そして現在では自殺者数は2万1000人を切っています(2018年)。しかしながら、自殺者が年間3万人を超えていた14年間で、約45万人が不本意な死を選んでいたのです。
不眠がうつ病の症状だと知らせること、そして、うつ病が疑われたら医者にかかること、ほかの症状が目立たない、軽症のうちにうつ病を治しておいたほうがいいこと、放っておくと、脳が変化して非常に治りにくくなること……こうしたうつ病の真実を知っておくことが大切です。
「うつ病」と「認知症」を見分けるには
最善の「うつ病対策」は、とにかく「早期治療」すること。これは、私がうつ病対策としていちばん訴えたいことです。ただし、老人性うつ病の場合は、一般にイメージされるうつ病の症状である「気分の落ち込み」や「自責感」が増すといった状態にならないことが多いので、この点にはとくに注意が必要です。
認知症とは違って、うつ病は急に発症し、不眠に代表される「睡眠障害」や「食欲障害」を合併することが多いのが特徴です。
家族が「認知症を発症しているのでは」と思って高齢者を病院に連れてきたら、認知症ではなくうつ病だった、ということが高齢者医療の現場ではよくあります。
60代くらいの初老期の場合、日常生活でどこか意欲がなくなって、外出や着替えをしなくなったうえに、記憶力などが衰えたために、周りから「ボケた」と思われている人の7~8割が、うつ病の可能性が高いのです。
前頭葉が衰えて感情が老化することでも似たような症状が表れますが、きちんと医師が診断すれば、ボケ、認知症か、うつ病かはだいたいわかります。
ところが、高齢者を専門とする精神科医の数があまりに少ないので、統計では全国で140万~150万人はいるのではないかと推定される高齢者のうつ病患者の多くが、適切な治療を十分に受けられていません。
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