ジャニー喜多川さんに学ぶトップの重大な資質 ビジネスパーソンとして超一流の存在だった

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そのほかにもジャニーさんは、自ら自動車を運転する姿や、新幹線のチケットを買って一般席に乗り込む姿を何度となく目撃されてきました。「効率重視やリスク回避を理由に、雑務はすべて部下にやらせる」という企業トップが多い中、ジャニーさんの姿勢には考えさせられるものがあります。

思い出すのは、ジャニーさんがタレントたちの舞台公演を客席から見守っている姿。もしかしたらジャニーさんは、常にファンたちの目線を忘れないようにしていたのかもしれません。それもまた、トップクラスのビジネスパーソンとして大切なことのように感じるのです。

後継者選びは最難関のミッション

ジャニーさんがエンターテインメントのプロデューサーや演出家として優れていたのは間違いないですし、事実として、歌って踊るアイドルの形式を確立し、常に新しい演出でファンたちを驚かせてきました。

ジャニーさんがビジネスパーソンとして優れていたこととして最後に挙げておきたいのは、それらを受け継ぎ、さらに発展させる後継者をしっかり作っていたこと。

昨年9月、滝沢秀明さんが「年内いっぱいで芸能活動から引退し、ずっと自分を育ててくれたジャニー社長のタレントを育成、プロデュースしていくという意思を継ぎ、ジャニーズJr.の育成や舞台、コンサート等のエンターテイメントをプロデュースする仕事に専念することを決意いたしました」と宣言して世間を騒然とさせました。

ジャニーさんは、「驚きとともにうれしくて涙がこぼれそうでした。このような決断をしてくれた滝沢には心より感謝しています」と驚きを隠しませんでしたが、2人を見守ってきた記者たちは「これは単なる立候補ではないな」と見ていたのです。

滝沢さんは、「これは私自身がいつの日からか意識し、ずっと頭の中に描いていたことであります」ともコメントしていました。ジャニーさんが日ごろから滝沢さんを後継者の1人とみなして声をかけ、プロデュースや育成も兼務させるなど、何らかの道筋を立てていた様子が伝わってきたのです。

ジャニーさんは自身の類まれなスキルと仕事の難しさを自覚しているからこそ、「後継者育成が最も困難なミッション」と思っていたのではないでしょうか。できればジャニーさんには、それを成し遂げた方法を語ってほしかったのですが、いつか滝沢さんの口からその話が聞けるかもしれません。

「病に倒れる直前までトップとして現場で働き続け、社員たちに惜しまれて送り出される」という最後は、ビジネスパーソンにとっては理想的な姿にも見えます。それはひとえにジャニーさんがエンターテインメントという仕事に愛情を注ぎ続けてきたからであり、今回の訃報に接し、「自分もそんな仕事をしたい」と感じた人は多かったのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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