ジャニー喜多川さんに学ぶトップの重大な資質 ビジネスパーソンとして超一流の存在だった

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第1に、ジャニーさんは実際の家族だけではなく、タレントたちを「自分の子ども」と明言し、分けへだてなく接してきました。第2に、近藤真彦さんなどのベテランから10代のジャニーズJr.まで、ほとんどのタレントが「ジャニーさん」と名指しでのエピソードを語っています。どちらも「家族のような存在」であるからこその言動に違いありません。

企業トップには「社員は家族同然」と語る人が多いものの、ジャニーさんほど多くの社員に目を配っている人はほとんどいないのではないでしょうか。「ウチはファミリー企業」「一丸となってやっていこう」という方針を掲げるのであれば、ジャニーさんのようにトップが社員たちのことを考え、自ら声をかけるくらいの言動が必要なのかもしれません。

その意味でジャニーさんが率いていたジャニーズ事務所は、「究極のファミリー企業」と言える気がします。

10代の少年に「ジャニー」と呼ばせた理由

9日深夜の第1報から10日にかけて、多くのメディアでジャニーさんの顔写真が映されています。あらためて、「これほど名前は知っているのに顔は知らなかった」と感じた人も多かったのではないでしょうか。

それは前述したように、タレントたちが「ジャニーさん」と名前を出したうえでエピソードを話し、一方で本人は裏方に徹していたから。そのことが世間の人々に、「名前やエピソードは知っているのに顔を知らない」という不思議な親近感を抱かせることにつながっています。

ただ、私のような取材者に対してもジャニーさんは、「社長」ではなく「ジャニーさん」と言うことを許すなど、穏やかに接してくれました。むしろジャニーさんは、取材者に丁寧語で話すなど腰が低く、それどころか「初対面の人は誰もジャニーさんと気づかない」ほど、“社長然”としていなかったのです。

あるとき、名前も知らない10代のジャニーズJr.がジャニーさんに、「あっち行けばいいの?」「僕、大丈夫だった?」と尋ねる姿に驚かされました。聞けばジャニーさんは、10代の少年たちに「ジャニーさんではなくジャニーでいいよ」と言っていたそうです。ただそれだけで終わらせず、メディアなど外部の人に対しての礼儀作法はしっかり教えていました。

年齢にこだわらず誰に対しても、そのような距離感の近いコミュニケーションスタイルだったから、タレントたちの本質を見抜いてプロデュースの方針やグループの組み合わせを決められたのではないでしょうか。

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