宇宙の「商業利用」がなかなか進まないわけ 元三井物産マンが起業した「宇宙商社」の挑戦

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
世界各地で民間企業によるロケットの開発や打ち上げが進んでいる。写真は2017年3月に種子島で打ち上げられたH2Aロケット(編集部撮影)
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、テスラ創業者のイーロン・マスク氏、ライブドア元社長で実業家の堀江貴文氏。この3人が共通して力を入れているのがロケットの開発だ。
ベゾス氏は2000年にロケット開発ベンチャーのブルーオリジンを設立し、マスク氏も2002年にスペースXを設立している。スペースXはすでに100機以上のロケットを打ち上げ、NASA(アメリカ航空宇宙局)などからも人工衛星の打ち上げを受注している。
堀江氏も小型ロケットを開発するインターステラテクノロジズに出資している。ほかにもイギリスのヴァージン・ギャラクティックやニュージーランドを拠点とするロケットラボなど、世界各地で民間企業によるロケットの開発や打ち上げが進んでいる。
背景には、観測衛星や通信衛星など、人工衛星の需要が急増していることがある。需要を取り込むために各社はロケット開発を進めており、宇宙産業は華やかに、壮大に成長しているように見える。
ただ、現状は政府や公的機関からの発注やエンジェル投資家を中心とした資金獲得で事業を継続しているところが多い。成長する宇宙ビジネスに「B to B」の流れを作ることができるのか。2017年に「宇宙商社」をコンセプトに設立された「Space BD」(スペースBD)の永崎将利社長に話を聞いた。

宇宙における商業利用はまだ不十分

――ロケットや人工衛星など、ものづくりのイメージが強い宇宙産業で人工衛星とロケットのマッチングや、打ち上げサービスを提供する「商社」を設立したのはなぜでしょうか。

宇宙産業が自ら収益を得られるビジネスになりきっていないという思いがあった。産業の両輪は技術革新と商業利用にある。宇宙産業では技術革新が続いているが、商業利用はまだ十分に進んでいない。

宇宙産業はもともと政府が主導して民間企業にロケットなど宇宙開発のためのインフラ作りを発注してきた産業で。官需依存の面が強い。一方で、人工衛星を打ち上げて通信や観測データを利用したいという民間企業は増えている。そのような企業と衛星を打ち上げるロケットを提供する企業をつなぐ存在が必要になっていると考え、宇宙商社としてロケットと衛星のマッチングや打ち上げにかかる煩雑な手続きを代行する打ち上げサービスを立ち上げた。

私自身は2013年に起業するまで三井物産で鉄鋼の商材を扱ってきた。鉄鋼の世界では、原料の購入から鉄を売るまでの流れが民間企業同士で還流している。「B to G(政府)」の状態を脱していない宇宙ビジネスを始めたのは宇宙好きだからではなく、いちばん難しい分野にチャレンジしてビジネスパーソンとしての本懐を遂げたいと思ったからだ。

次ページにわか宇宙ベンチャーは危うい
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事