宇宙の「商業利用」がなかなか進まないわけ 元三井物産マンが起業した「宇宙商社」の挑戦

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――日本でも民間企業によるロケット打ち上げを目指す動きなど宇宙分野での起業が盛んになっています。

にわかに宇宙ベンチャーが増えて、宇宙ビジネスが脚光を浴びているが、そうとう危ない状況にあると思う。なぜなら、国やJAXA(宇宙航空研究開発機構)を相手にして利益をあげている企業以外で、利益を出している企業はほとんどないからだ。

今後は海外の需要を日本国内に引き込んでいく

日本では主な宇宙ベンチャーが20社ほど存在する。しかし、大半は資金調達を繰り返して独自の衛星やロケットを生み出している状態で、売り上げ自体はまだ立っていない。本来であれば、例えば3億円かけて人工衛星を作り、3億円かけてロケットを打ち上げ、衛星を5年間運用して12億円の収入を得て、粗利を6億円得るというのが健全な状態だ。

永崎将利(ながさき・まさとし)/1980年福岡県北九州市生まれ。2003年早稲田大学教育学部卒業後、三井物産入社。人事部(採用・研修)、鉄鋼製品貿易事業などに従事した後、2013年に独立。教育領域の事業開発を手掛けるナガサキ・アンド・カンパニー設立。2017年9月スペースBD設立(撮影:梅谷秀司)

ところが、今は投資家からどれだけリスクマネーを集めることができたかで評価されている段階で、ビジネスとして健全だとはいえない。資金を集めることは重要だが、いかに収益を出せるかが宇宙ベンチャーの課題だ。

――スペースBDが日本の宇宙産業発展のために果たす役割は何ですか。

海外で人工衛星を打ち上げたい企業や団体に日本のロケットなどを紹介することで、日本の宇宙産業にB to Bの流れを作っていく。昨年5月には国際宇宙ステーション(ISS)の日本の実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出する事業者として当社は三井物産とともに選ばれた。スペースBDにはすでに海外事業者を含めて10機以上の受注実績がある。

今年3月には「きぼう」の船外実験装置の利用事業者として民間で唯一選ばれた。ISS利用のリーディングカンパニーともいえる状況なので、海外でも信頼を得ることができて衛星打ち上げ事業者へのマーケティング活動を順調に進められている。

日本のロケット打ち上げ事業者に海外の潜在顧客を紹介することができ、今後は海外の需要を日本国内に引き込むことが一層できると思う。世界の需要動向も把握しているので、日本のロケット開発事業者にロケット開発の参考になる情報も提供できるだろう。

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