量的緩和とは何か。実は日本が世界の先達、非伝統的な金融政策

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 では、その効果はどうだったのか。多くの人が認めているのが、実は金融システムを安定させる効果だ。日銀が短期金融市場におカネをジャブジャブつぎ込んだので、資金繰り破綻を防ぐことができた。次いで、金利と為替市場への影響である。金利については、中期、長期の金利も低いレベルで安定していた。為替は円安を実現した。もっとも、円・ドルに比べて、円・ユーロでは、その効果が明確でない(下図)。


 量的緩和政策の最大の目標ともいえるデフレ脱却=物価に対する効果は判然としない(下図)。なぜなら、それは人々の予想に働きかける政策だからである。日銀の決意と行動を見て、人々は将来インフレになると予想してモノを買いだす。モノが売れれば物価は上がり、景気も回復し始めるという図式である。

もちろん、日銀が目指すべきインフレ率を示す「インフレターゲティング政策」のように、もっと強くコミットメントすれば、物価も上がったはずという批判もある。ただ、人々の予想を日銀の約束とおカネの量だけで、コントロールできるのかどうか。決着はついていない。

矢継ぎ早に繰り出される非伝統的金融政策

昨年9月の米リーマン・ブラザーズの経営破綻以降、世界の金融不安は金融危機に転化した。欧米を中心に主要先進国の短期金融市場は、次に危ない金融機関はどこかと疑心暗鬼に陥り、凍りついた。それは一般企業が資金を調達するためのコマーシャルペーパー(CP)市場や社債市場にも波及。金利が上昇しただけでなく、新たな発行もできなくなった。金融危機は実体経済にも及び、今や負の共鳴を起こしつつある。

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