量的緩和とは何か。実は日本が世界の先達、非伝統的な金融政策


原英次郎 ジャーナリスト

 「世界中が金利引き下げ競争の局面に入った」。こう語るのは、みずほ証券金融市場グループの高田創チーフストラテジスト。メリルリンチ日本証券調査部の吉川雅幸チーフエコノミストは、さらに踏み込んで、FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行は「すでに量的緩和政策に入った」と見る。

量的緩和政策なるものは、いったい何なのだろうか。量的緩和政策は、一般的には「非伝統的金融政策」と呼ばれる。

非伝統的金融政策とは、米プリンストン大学の教授で、著名な金融学者でもあったベン・バーナンキFRB議長によれば、次の三つに集約できる。【1】将来の金融政策ないし短期金利についての予想をコントロールする、【2】特定の資産を大量に購入する、【3】中央銀行のバランスシートの規模を拡大する、の三つだ。

そもそも金融政策をつかさどる中央銀行の役割は、物価を安定させることによって、経済を安定的に成長させることにある。加えて、政府とともに金融システムの安定性を維持することも、大きな役割だ。

通常なら、中央銀行は金利を操作することによって、その目的を達成しようとする。周知のように、景気が悪くなれば金利を下げて設備投資や消費を刺激し、過熱しそうであれば金利を上げる。金利とはおカネの値段。需要と供給で金利が決まる。金利を下げたい場合には、日本銀行は金融機関から短期国債など、信用力の高い債券を買い入れて資金の供給を増やし、金利を下げる。上げたい場合は、それを売って資金を吸収する。要は「量」を調整することで、金利をコントロールしている。

日本の場合、金利の操作は短期金融市場、中でも金融機関同士が日々の資金繰りを調整するために、おカネの貸し借りを行うコール市場を通じて行われる。操作の対象となるのが、オーバーナイトの無担保コールレート。オーバーナイトとは一夜明けたら返済しなくてはいけないという意味だ。米国の場合は、FF(フェデラルファンド)レートである。

非伝統的金融政策とは、広い意味では、こうした通常の金融政策以外の手段をすべて含むともいえる。非伝統的金融政策が議論された背景には、1990年代から2000年代初頭にかけて、世界中に広がったデフレ懸念がある。デフレとは物価が持続的に下落していくことをいう。

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