日本の職場から「雑談」がなくなるのは危ない 社員な幸せな会社は業績がいいという事実

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──伝播力が意外と強い。

自分の職場の風通しの悪さに気づいたある30代の女性が、伊那食品の創業者の著書を読んで感銘を受け、講演会や伊那食品にも行って何度も話を聞きました。それを伝えられた同僚たちも強い興味を持ち、伊那食品に行ったそうです。職場の風通しがよくなると、業績も向上、上長も関心を抱かざるをえず、伊那食品へ(笑)。1人の女性の熱意が組織を変えました。現場を見ていると、声に出してあいさつをするだけで変わります。

「利益と社員の幸せ」は同等に大事

──幸せのボトムアップですね。一方、トップがすべきことは?

幸せな職場の経営学(前野 隆司 著/小学館/1400円+税/221ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

会社の理念に「社員が幸せになる」が入っている会社は結構あるそうです。問題は、社員に伝えているか。口に出すのと出さないのとでは全然違う。ある会社の系列10社中、最も不幸だった会社でトップがそれを口にして、半年後に真ん中、2年後には1〜2位を争うまでになったという例もあります。

また、前述の女性のような人を各職場に配置するという考えもあります。アメリカにはチーフ・ハピネス・オフィサーという、職場のハピネス、幸せについて考える役職があります。

──小さい組織だからできる、ということはありませんか。

本書には大企業の実践例としてヤフーを入れました。社員数500人程度の伊那食品と同列に論じられませんが、宮坂学・元社長が「利益と社員の幸せ」の両方が大事だと決断したことで、大きく変わりました。人事制度は会社が内部に提供するプロダクトという考えはその1つで、コンセプトは「社員の才能と情熱を解き放つ」。大企業でも幸福な職場を目指せるし目指すべきです。

──幸福学が広まったときの幸せ格差の拡大を懸念していますね。

気づき方の差を心配しています。経済的に余裕がない層には響きにくい。気づいた順に幸福になっていくと、差が開きます。企業などお金がある層には自走してもらい、貧困層の子供、高齢者などをがっちり支えて研究活動していきたいですね。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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