日本の職場から「雑談」がなくなるのは危ない 社員な幸せな会社は業績がいいという事実

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──「社員の幸せ」と言われてもピンとこない社長が登場します。

一流企業のトップは、儲けることで出世した人なので、自分の価値観を覆されるようなことを聞くと思考停止状態になる。「言っていることはわかった、でも意味がわからない」みたいな(笑)。こうしたトップは少数派ではありません。

──「働き方改革」でそんなトップの会社も変わるのでは?

実は「働き方改革」には危うさを感じています。時短だけを追求すると、職場で会話もせずに定時まで働いて帰るということになりかねない。そんな職場、楽しいですか? 時短にはなったけれど、“やらされ感”もあって、幸せではない。結果、生産性は下がります。

周囲とのコミュニケーションが重要

──幸せな職場をつくるに当たり、コミュニケーションの重要性を強調しています。

前野隆司(まえの たかし)/1962年生まれ。86年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、キヤノン入社。2008年から慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。専攻は工学から哲学まで幅広い。著書に『幸せのメカニズム』など。(撮影:尾形文繁)

通り一遍ではない、感情も含めた深いコミュニケーションからすべては始まります。同僚のことを知れば、どう振る舞えば相手が仕事をしやすくなるかわかり、逆に相手も同じようにしてくれます。本書で紹介した、幸せな職場のチャンピオン、伊那食品工業では社員が互いを家族だと思ってコミュニケーションを取り、行動します。会議も書類はほとんど不要、掃除だってサボらない。手を抜かないので仕事は短時間で終わります。

昔の日本の職場では、だべりながらの仕事が普通でした。今は、話しかけると相手の邪魔、のような感じになっている。それで、隣の人にもメールで連絡して終わり。

──コミュニケーションにはいろんな効果がありますね。

周囲とのコミュニケーションを通してやりがいを感じられます。チームのメンバーに感謝されたり、上司に頑張っているねと言われたりすると、ワクワクしますよね。ワクワクすると、自己肯定、自己実現、前向きで楽観的な気分が醸成され、仕事に対する好循環が生まれます。

楽観的な気持ちになると、目の前のことにこだわらず、状況を俯瞰できる。そうすると悩みの解決策も見つけやすい。結局、いろんな人とコミュニケーションを取ることで、話がいい方向に進みます。

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