「頑張れ」はいつからNGワードになったのか 励ますつもりが相手を追い詰めている?

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しかし、他罰(なんでも他人のせいにしてしまうような思考)に陥っていると、「頑張れ」と言われたことに対し「なんで自分が頑張らないといけないのか?」と、腹立たしい思いになりがちです。苦しいのは、自分のせいじゃない、このような状況になったのは周りのせいや、自分を認めない相手のせいと思えば、自分が頑張ることが理不尽にさえ思えるからです。

しかし、自分の人生を他人が代わりに生きてくれるということはありません。自分がどうにかしないと、前に進むことも、状況を打破することもできないのです。ですから、背中を押してあげることが時には必要になります。

言葉自体に嫌悪を感じる必要はない

最近では、専門家の勉強会などで、精神科の先生方がうつ状態であっても「頑張れ」と言ったほうがよいと推奨する意見も増えてきています。頑張れと声がけすることで、起きている出来事や物事を自分事として捉えてもらいたいという思いが含まれているのだと思います。

そういう意味では大切な言葉なので、何でもかんでも一律に「これを言ったらダメ」などという対応を規制することや、それを言うことが悪であるような、まるで全員一致の総意のようになることを避けなくてはなりません。

「頑張れ」と言われて嫌な気持ちになるのは、次のような理由が挙げられます。

・頑張っていることを認めてもらえなかったのかという残念な気持ち
・どう頑張っていいのかわからない焦りや不安
・わかっていないくせにといういら立ち
・理解してもらえなかった悲しみ
・自分の中での限界に達していて、これ以上やりたくないという拒否

思いは1つではなく、複数絡まっていることもあるでしょう。

基本的に怒りのもとには、悲しみの感情が潜んでいるので、自分の状況や思いを理解してくれなかったという失望が、その言葉に対しての拒絶が起こる原因になると思います。

ということは、上から目線や憐み、あいさつレベルでの発言は避けたほうがよいということになります。

逆に言うとそれ以外ならどうでしょう。

例えば、スポーツ選手に対しては、当たり前のように「頑張れ~!」と声援を送っていないでしょうか。また、受験や何かの試験に向かう家族に「頑張ってね」と声がけする人も少なくないと思います。真摯に何かに取り組んでいる人に対して、心から応援する「頑張れ」はすばらしい言葉だと思います。

最近は、相手にかけてはいけない悪い言葉とのイメージが先行するあまりに「顔晴れ」などと、当て字で表現する方も増えています。遊び心で当て字を使うのは、問題ないとは思いますが、かえって不快に感じているという意見を聞くこともしばしばです。

そもそも、頑張るも当て字で、「眼を張る」といった、気力を込めて何事かに立ち向かう様子、また「見張る」から一定の場所から動かないという意思の強さを意味する説と、「我を張る」といった、自分の意思を貫くことを意味する説とあります。いずれも本人が、自分自身で乗り切るための応援であったはずなのです。

相手の状況がわかっていないうえでの安易な声がけや、限界に達している相手へ追い打ちをかけるような叱咤を避けなければと思いますが、この言葉自体に嫌悪を感じる必要はないのではと思います。

本当に気を遣う言葉の1つになってしまいましたが、相手を理解し認め、心からエールを送る言葉としての「頑張れ」や、自分の希望をかなえたり、意思を貫くために努力する「頑張る」が、言いづらくなることがないようにと願います。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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