携帯電話春商戦を制するのはどこだ? 販売激減でも競争過熱

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携帯電話春商戦を制するのはどこだ? 販売激減でも競争過熱

携帯業界が最も重視する春商戦が近づき、新端末が続々と披露された。

 ソフトバンクは9機種を投入、新製品発表会では機種ごとに吉本興業のお笑い芸人が製品を紹介。携帯から投票するお笑い映像コンテストや、月額5000円相当のコンテンツ26種類が月額315円で使い放題となる新プランを打ち出している。

一方、苦戦が目立つKDDI(au)では、世界初の3D携帯やタッチパネル、シンプル機能など、一気に12機種を投入。2008年度の第3四半期末では在庫が膨らんだことで、端末評価減119億円(前年同期比104億円増)を計上したが、「ラインナップがそろい、春商戦で勝ち抜く自信が出てきた」(KDDIの小野寺正社長)と強気だ。得意とする音楽やスポーツなどでコンテンツも拡充する。

昨年11月に冬春商戦まとめて21機種を発表したNTTドコモは、それまで「機能別」の2系統だった製品ラインナップを四つの「ライフスタイル別」に変更した。タッチパネル対応機種を拡大したほか、鉄道情報やクーポンなど個人の行動を支援するサービスにも力を入れる。

各社がコンテンツサービスを強化する背景には、通話料値下げで音声収入が減っていることがある。少しでもデータ定額の利用者を増やし、収入底上げを狙うのは必然の策といえるだろう。

シンプル機能で安価な携帯から高機能携帯までラインナップを充実させるのも各社共通。「販売台数が減ったから投入機種も減らすと、ますます需要は減る。需要喚起は責務」(小野寺社長)と意気込むが、すでに利用者の流動性はかなり低下している。最大手ドコモの今年度第3四半期の解約率は0・44%と“驚異的な水準”。それでも販売費用を積み増し、春商戦に勝ちたいのが各社の本音だ。

08年度の販売台数は、最大で3割減とかつてない落ち込みが見込まれる。販売方法変更で端末価格が上昇し、割賦販売普及で買い替え期間が延びたことが大きい。そこに景気悪化に伴う消費者心理の冷え込みは痛手だ。マイナス材料が多いだけに、春商戦に熱を入れすぎるあまり、「商戦後、ショップに閑古鳥が鳴かなければいいが…」。販売店からは、そうした懸念の声も出ている。

(撮影:梅谷秀司)

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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