「きみ波」を青春アニメの王道にあえてした理由 世界的アニメーターがデートムービーに挑戦

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意外に、深刻なシーンからコミカルなシーンにつながってもオッケーなんだと思ったり、トレンディドラマじゃないですけど、こんな豪華な家に住まないだろうというところでも、そのほうがドラマとして見やすいかもしれないと思いました。

SFでも、僕は何もかも異次元にしたがるところがありますが、どこか見やすくしてあげないといけないんだと気づきました。そしてやはり美男美女がいい。スタイリッシュな感じを意識して研究してきました。

海の事故で命を落とした港。しかし、ひな子の歌をきっかけに水の中から現れるようになる ©2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

――脚本家に『けいおん!』『若おかみは小学生!』などで知られ、そして湯浅監督とは『夜明け告げるルーのうた』でタッグを組んだ吉田玲子さんが参加していますが、吉田さんとはどういう風に物語作りを行ったのでしょうか。

最初にどういった方向の作品にするかと納得し合いながら進んでいったので、吉田さんの意見やアイデアもすんなり入ってきましたし、各キャラクターの気持ちの流れなど、しっかり作っていただきました。とても「スムーズにいった」という印象が強いです。

人気のアニメには少女アニメ的なセンスがある

――女性が主人公ということで、スタッフの女性陣がこの作品に寄与した部分はありますか。

この作品は、女の子を主人公にしたほうがいいと思ってましたから。吉田さんをはじめとした女性陣とよく話しながら、お話を作りあげていきました。しかし、プロデューサーなど女性陣が多いのは、結果的にそうなっただけで、作品内容に合わせてというわけではありませんでした。基本的には、男性とも女性とも意識しない感じで、お互いの意見を聞きながら作っていく感じでした。

湯浅政明(ゆあさ まさあき)/1965年生まれ。サイエンスSARU代表取締役。初監督作品『マインド・ゲーム』(2004年)で、モントリオール・ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞受賞。2017年公開の『夜は短し歩けよ乙女』で、オタワ国際アニメーション映画祭長編部門グランプリ受賞、同年公開の『夜明け告げるルーのうた』でも、アヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリにあたるクリスタル賞受賞 (筆者撮影)

――本作のコミカライズ作品が小学館のフラワーコミックから刊行されているのも象徴的だと思ったのですが。

あのコミックは発見がありましたね。僕は、姉が持っていた少女マンガを読んでいたので抵抗がないし、どういう感じになるのか興味がありました。でも昔から萩尾望都さんや竹宮惠子さんみたいに、男が読んでも面白いマンガがたくさんありますからね。

――少女マンガを意識しようと思ったことは。

自分も『宇宙戦艦ヤマト』がはやっていたころの、聖悠紀さんのコミカライズ版が好きだったんですよ。もともと自分の作品には少女マンガ的な繊細な描写が少ないなと思っていて、昔からちょっとずつ入れようとはしています。

今、人気のあるアニメを見ると、少女アニメ的なセンスがある。今の人がそういうテイストを求めているのであれば、もっと入れていきたいなと思っています。今回は(キャラクターデザイン・作画監督の)小島崇史くんのデザインのおかげでグッとそっちにいけたかなと思っています。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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