――湯浅監督らしさは色濃く残しながらも、今回はいつも以上に広い層に開かれた映画にと思いました。製作サイドからの期待感もあったのではないでしょうか。
お金を出す人たちにとっては、ヒットを願っているので、こうしてほしい、ああしてほしいという気持ちがあると思います。ヒットしてもらいたいという期待は感じていましたし、僕としても、たくさんの人に見てもらいたいという気持ちがありました。その点では合致しており、できるだけ意見を聞いて作ってみようと思って制作していました。われわれが考えていることを、製作サイドの皆さんは、好意的に受け止めてくださいましたけどね(笑)。
――今回は、普段アニメをあまり見ないような若い女性層にも訴求できる内容だと思ったのですが、意識したところはありますか。
アニメを見る人口がどんどん減っていると言われた時代もあり、昔はとくに意識していました。子どもが見るようなアニメは、多くの人に受け入れられてきましたが、大人が見るようなアニメは、作品が多く作られている割にはあまり広がっていないと思っていました。
しかし、2016年に新海誠監督の『君の名は。』が大ヒットし、ここ数年も『ドラえもん』や『名探偵コナン』など多くの人がアニメ映画を見に行き、意外とみんなはアニメに抵抗を持っていないということがわかってきました。日常的にアニメを見る習慣も生まれてきていると思っているので、そうした人を意識しています。
リアルなラブストーリーをやってみようと思った
――シンプルなラブストーリーは初めてじゃないですか。
初めてという意識はありませんでしたが、今回はリアルなラブストーリーをやってみようと思ったんです。もともと格好いいラブストーリーや青春映画を描くのは苦手でしたが、大人になると、恥ずかしいことがなくなってくる。だんだん「格好悪い青春」みたいなものを書いてみたいなと思うようになったんです。
――2人の幸せな日々を描くシーンで、2人がふざけあいながらGENERATIONS from EXILE TRIBEの主題歌「Brand New Story」を歌う箇所が印象的です。かなり幸せな感覚を描き出した感じがありました。
あんなたわいもない歌を流すという作品もなかなかないんじゃないですかね。友だちの結婚式のビデオを見せられる感じというか、それを見ている僕たちは何なんだろうと思うかもしれません。しかし、本人たちは楽しい。そういう雰囲気を出してみたかったんです。
――実写映画では「キラキラ映画」と呼ばれるようなラブストーリー映画が隆盛ですが、アニメでそういったキラキラ映画をやってみようという狙いはあったのでしょうか。
そこまでハッキリしたものではなかったですけど。みんながどういうもので楽しんでいるんだろう、どういうもので感動しているんだろうということには興味がありました。だからヒットしている映画やドラマはできるだけ見るようにしていたんです。
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