知らないと損「相続税」40年ぶり大改正ポイント 遺産分割をめぐって争う件数は増加している

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相続法が見直しをされなかったこの40年の間に、日本人の平均寿命は延び、高齢化が進行するなど、社会情勢の大きな変化がありました。そのため、次第に相続法が時代に合わなくなり、法律でもっと保護をしなければならない人も増えてきています。

実際に80歳以上で亡くなる方は、1990年では40%程度でしたが、現在は70%程度まで増えています。90歳を超えて亡くなる方も増え続けていて、相続をさせる被相続人の高齢化は、今後もさらに進むと考えられています。

相続させる側が80代、90代となると、相続する子どもは60代、場合によっては70代ということも考えられ、相続させる側もする側もともに老人という、いわゆる「老老相続」が増加しているのです。

このような背景もあり、高齢になってから相続をすることになる配偶者(妻または夫)を保護するため、認知症になる前に遺言書を書いてもらえるよう、遺言書を作成しやすくしたり、手続きを簡単にしたりする法律の改正が今回行われたというわけです。

改正のポイント

主な改正のポイントは、次の6つです。

1、妻(夫)がそのまま自宅に住めるように
2、婚姻期間20年以上の夫婦の自宅の贈与が、遺産分割の対象外に
3、遺言書の一部がパソコンで作れるように
4、遺言書を法務局に預けることが可能に
5、長男の妻も財産を取得することができるように
6、故人の預貯金を引き出すことが可能に

以下でそれぞれについて解説していきます。

1、 妻(夫)がそのまま自宅に住めるように

夫または妻が亡くなったときに、残された配偶者(妻または夫)が生活できなくなってしまうことがないようにするために、配偶者がまずは生活の基盤である自宅に優先的に住むことができるようになりました。この配偶者が自宅に住み続けることができる権利を「配偶者居住権」といいます。

日本人の典型的な相続は、自宅(持ち家)と少しの預貯金であることから、実は相続が発生した場合に問題が起きるケースが少なくありませんでした。

例えば夫が亡くなり、相続するのが妻と子どもという場合、法律上の妻の取り分は1/2、子どもの取り分も1/2、つまり半分ずつ分けることになります。

ところが、夫が残した財産が2000万円の自宅と3000万円の預貯金だった場合、妻は住む場所として自宅を相続したいのに、取り分が1/2だと預貯金は500万円しか相続することができず、生活費が不足するという問題が生じていたのです。

そこで、自宅の相続を、自宅を所有する権利と自宅を使う権利とに分けて、自宅を使う権利、つまり自宅に住む権利を妻(配偶者)に優先的に認めることにしました(配偶者居住権の創設)。

自宅の2000万円の価値を、1000万円の所有権と1000万円の配偶者居住権とに分けて、子どもが所有権の1000万円を、妻が居住権の1000万円をそれぞれ相続することにより、妻はこれまでよりも1000万円多い1500万円の預貯金を相続することができ、安心して生活できるようになるというわけです。この制度は2020年4月1日からスタートします。

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