元エンタメ業界人が耳鼻咽喉科を経営するワケ 異業界出身者ならではのアイデアとは
異業種から転身した水上氏だが、「エンタメ業界と医療業界の共通点は多い」と語る。
「エンタメ業界も医療業界も『顧客と向き合うビジネス』。顧客のニーズをくみ取り、それを実現するというベースは同じ。また、従来のやり方のいい点を受け継ぎつつ、時代に応じた新たなサービスや価値を生み出していく点はまったく同じだと実感している。
事業戦略を考えるだけでなく、“具現化できること”が私の強みだ。決められた期間内に目標を達成するため、ゴールから逆算して考え、段階的に実行するというエンタメ業界での経験が医院経営にも活かされている」
口コミで音楽業界関係者などが訪れる
開院してから意外なニーズがあることにも気がついた。水上CEOのキャリアを知ってからなのか、口コミからなのか、音楽関係者や、教師や講師など声を使う職業の人が多く訪れるのである。「あるときは、ライブハウスでスピーカーのそばにいて、耳が聞こえにくくなったという人が来たこともある」(水上CEO)。このほか、羽田空港のある大田区に立地している土地柄、キャビンアテンダントの患者も少なくないという。
水上CEOによると、耳鼻咽喉科の診療項目は一般的に考えられているよりかなり広範囲に及ぶ。実際、風邪やめまい、耳鳴り、ぜんそくから花粉症、嚥下障害や頸部(けいぶ)の腫れなど、扱う疾患は多岐にわたり、「患者のニーズは大きい市場」と、水上CEOは見る。
こうした中、「花粉症の時期などだけではなく、年間を通じてどれだけ患者の健康ニーズに応えることができるのかを考えることが経営方針。『トータルで健康になってもらいたい』という考えのもと、さまざまなメニューを提供していきたい」と話す。今後はさらに、水上CEOのこれまでの人脈を生かして企業との協業や、遠隔診療なども視野に入れているという。
水上CEOは、同院の強みを「医経分離」としているが、確かに開業医でこうした体制になっているところは珍しいだろう。加えて、同CEOは自ら複数の事業をゼロから立ち上げた経験があったからこそ、分野が違ったとしても生かせたのではないか。
一方で冒頭のとおり、耳鼻咽喉科はほかの診療科と比べて診療単価が低いことから、来院患者をより多く集めることが経営強化のカギとなる。目下、さまざまな取り組みによって予想以上の患者を確保しているが、“町医者”の使命の1つは地域に根ざし、近隣の患者がいざというときに頼れることではないだろうか。そのためには、初診とリピーター、近隣患者と遠方からくる患者のバランスを図っていくことが重要となるだろう。
「従来の耳鼻咽喉科のやり方はしない」と語る水上CEO。エンタメ業界流の型破りな経営手法は、医療業界に新たな風を吹かせるだろうか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら