元エンタメ業界人が耳鼻咽喉科を経営するワケ 異業界出身者ならではのアイデアとは

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さらに、血液検査やプラセンタ注射など自由診療にも積極的。耳鼻咽喉科は花粉症やインフルエンザなど、季節的な要因で業績が左右されやすいとの指摘もあるが、自由診療を強化することによって年間の患者数の平準化を図っている。

田園調布耳鼻咽喉科医院のこうした戦略を立てているのが水上CEOだが、実はこれ以前に本格的な病院経営の実績はない。妻である水上真美子医師が東邦医大から独立し、開業するにあたって同院のCEOに就いたが、もともとはまったく違う分野で活躍していた。

キャリアのスタートは金融業界。その後エンタメ業界へ転身し、数々の事業を立ち上げていく。まず、オリコンで音楽以外のエンタメランキングを創設したのを機に、20代半ばで取締役に抜擢。2001年にアスキー系の映像コンテンツ会社の代表となり、ストリーミング事業を立ち上げる。続いて、日本コロムビアの執行役員として制作・宣伝部門を統括。退任後は、TOKYO MXテレビにて編成企画マーケティング部長を務めていた。

医療器具もすべて自ら選んだ

もともと、医療業界には関心があったという水上CEO。「テレビ局の企画責任者だったときに、わかりやすい医療番組を立ち上げたいと考えていた。その実現に向けて奔走するうちに医療業界への関心が高まっていった」という。

その後、知り合いの病院長から、新薬開発から介護事業までワンストップで行う会社を立ち上げたいという相談を受け、経営に参画。同じころ、妻の開業話が持ち上がり、経営のアドバイスがほしいと言われたことで病院経営に携わるようになった。

こうした中、図らずして生きたのが、エンタメ業界で複数の事業を立ち上げた経験だ。例えば、耳鼻咽喉科を立ち上げる際、もともと住んでいた田園調布は候補に挙がっていたが、開院するにあたって近隣だけでなく、都内全域はもとより、神奈川県川崎市や横浜市からの流入も想定して調査を実施。

「人口分布の分析や診療圏調査はもちろん、各エリアを実際に自分で歩いて、歩行者数や各公共交通機関の曜日別・時間別乗降客数を調べた。また、『どの時間帯に、どういう動線で人が行き来するのか』を徹底的にリサーチした」(水上CEO)

さらに、病院や診療所を始める際は、医療コンサルなどを入れ、こうしたところと提携をしている医療器機などを導入する場合が少なくないが、水上CEOは、コンサルなどを利用することなく検査器具から診療器具まで水上医師と相談して決めた。複数の器具を検証するなかで、自身で機能を調べるほか、相見積もりもとった。

「使い勝手を追求すると同時に、ビジネス的観点からコスト面も交渉した。電子カルテやオンライン予約など、ウェブ関連の業者だけでも10数社を比較して選んだ。こうして一つひとつについて、すべて比較して選んでいるところは珍しいと思う」

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