サブスク急拡大の理由は「ユーザー有利」にあり リカーリングマップで俯瞰するサブスク支持

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レーザーブレイドは、本体を保有してもらい、付属品を継続的に購入してもらいながら利益を得る収益化モデルです。カミソリを販売するジレットが、カミソリ本体(レーザー)を提供し、その後、利幅の大きいカミソリの刃(ブレイド)で継続的に利益を生んだことに端を発しています。携帯電話の本体と通話料、ウォーターサーバーと替えの水、プリンターとトナーなど、かなり多くのビジネスで使われています。

本体の利益は、薄利か、場合によっては損失を出すほどですが、付属品の利幅が大きいので、それを時間をかけて購入してもらい、継続的に利益を得ます。

サブスクリプションとレーザーブレイドを比べると、「継続の拘束力」に関しては、リカーリングマップを見ればわかるとおり、両者はほとんど変わりません。違うのは「利益回収の時間」です。レーザーブレイドは、利幅の大きい付属品でできるだけ短期に回収しようとするのに対し、サブスクリプションは一定金額で薄く長く利益を回収しようとします。つまり、サブスクリプションのほうがレーザーブレイドよりも「ユーザー有利」です。

ある資産を対象として、ユーザーは所有権を持たずにサービス提供企業に使用対価を支払うのがリースです。ユーザーはプロダクトが新品で手に入る代わりに、数年間にわたって月々の使用料を支払うことになります。

サブスクリプションと比べると、「継続の拘束力」を見れば、サブスクリプションのほうがリースよりも圧倒的に「ユーザー有利」なことがわかります。サブスクリプションはユーザーが利用登録さえすればスタートできるのに対し、リースは、法的に守られている契約書を交わしてからのスタートです。月々の利用料が滞れば、とたんに延滞利息が発生します。法的に守られているのは企業にとっては安心感がありますが、ユーザーにとっては利便性が妨げられます。

フリーミアムとサブスクリプション

旧来型のリカーリングモデルとサブスクリプションを見てきましたが、サブスクリプションは、リピーター、レーザーブレイド、リースよりも「ユーザー有利」であることがわかります。これは、リカーリングマップを見ても一目瞭然です。「継続の拘束力」は小さく、「利益回収の時間」は長いため、ユーザーに支持されているのです。

サブスクリプションは、2010年頃から注目されました。リーマンショックなどの不況を経て、「所有から利用へ」と消費マインドが移り変わったところに、デジタル化の急激な波が押し寄せてさまざまな企業が取り入れるようになったのです。

実は、その10年以上前、すでに「ユーザー有利」な収益化モデルが席巻していました。それがフリーミアムです。2000年代より、デジタルの隆盛によって急激に広まり注目されました。

フリーミアムは、無料を意味するフリーと、有料を意味するプレミアムの2つを掛け合わせた造語です。スマートフォンのアプリケーションには、ゲーム、SNS、ニュース、天気予報など数多く入っていると思いますが、おそらくそのほとんどを無料で使っているのではないでしょうか。

しかし実際には、無料をウリにしているものの、使用に応じてどこかのポイントでユーザーから課金することで成り立っています。その代表例は、無料でダウンロードして遊べるゲームです。本体は無料なので、ユーザーは無料のまま遊ぶこともできるし、有料アイテムを購入することで、他の人よりもゲームを有利に進めることができます。

つまり、支払いの有無は完全にユーザーに委ねられているという意味で、「ユーザー有利」のリカーリングモデルです。企業は「利益回収の時間」はある程度かかることを覚悟しなければなりません。

「継続の拘束力」はきわめて小さく、「利益回収の時間」は長い。フリーミアムもサブスクリプションも、「ユーザー有利」の収益化モデルだから脚光を浴びたのです。

川上 昌直 兵庫県立大学国際商経学部教授

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かわかみ まさなお / Masanao Kawakami

1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。博士(経営学)。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。専門はビジネスモデル、マネタイズ。主な著作:『「つながり」の創りかた』(東洋経済新報社)、『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)。

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