ペイペイ巨額還元に打ち勝つ「楽天ペイ」の野望 楽天ポイントの2500億円還元は持続可能か

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スマホ決済で大手の一角にくい込む楽天。「ペイペイ」や「LINEペイ」にはない独自の強みはポイント経済圏にある(撮影:大澤誠)
ソフトバンクとヤフーの「ペイペイ」、LINEの「LINEペイ」、そしてNTTドコモの「d払い」と、スマートフォン決済サービスの大規模な還元キャンペーンが世をにぎわせている。そんな中、キャンペーンもテレビCMを打ち出さない、一見すると”地味な”展開で勝負しているのが、楽天の運営する「楽天ペイ」だ。
MMD研究所が2019年1月に実施した調査によれば、スマホ所有者が利用しているQRコード決済サービス(調査は2019年1月中旬)のトップは「楽天ペイ」(9.4%)だった。これに「ペイペイ」(8.1%)、「LINEペイ」(7.9%)が続く。同調査で最上位に来た利用動機は「ポイントがたくさん貯まるから」。利用率の順位からは、単発の高還元キャンペーンより、楽天が2002年から手がけるポイントプログラム「楽天スーパーポイント」の威力が勝っていることが伺える。
楽天は今年4月、フィンテック部門の運営会社とは別に、本体の直下に楽天ペイメント社を新設する。新たな経営体制のもと、決済事業をどう拡大していくのか。同社ペイメント事業部のヴァイスプレジデントで、楽天ペイメント社長に就任予定の中村晃一氏に話を聞いた。

キャッシュレス市場をきちんと攻めていく

――決済サービスの競争が激化している中で、楽天グループの強みはどこにあるのでしょうか?

楽天ポイントがわれわれグループの最大の武器だ。2018年は年間で2500億円分、これまでの累計では1.2兆円分以上のポイントを発行している。楽天カードだけでも、2018年の決済高は約7.5兆円にのぼった。つまりはその1%に当たる750億円分は当社の負担でユーザーにポイントの形で還元していることになる。世間では「100億円キャンペーン」が話題だが、当社の750億円というのはなかなかの規模だ。

楽天ポイントの使い勝手をさらに高めるために、これまでバラバラだった楽天の決済機能やポイントの機能などを3月18日から1つのアプリに集約する。このアプリ上では「楽天キャッシュ」という電子マネーで送金サービスも使えるようになり、利用者は楽天の決済にかかわる基本機能を全部使える。アプリの設定を行えば、店頭決済にも楽天キャッシュや楽天ポイントを優先的に使い、足りない分を登録したクレジットカードで払うスタイルにできる。

――4月1日に、楽天ペイメントという会社を新設します。

キャッシュレスの動きが、官民でこれだけ盛り上がってきていることが大きい。現在は2割程度にとどまる日本のキャッシュレス決済比率を日本政府は2025年まで4割へ引き上げようとしている。今回の組織編成は、キャッシュレス決済市場にある大きなホワイトスペース(伸び代)を、楽天としてきちんと攻めていくための体制を築こうという主旨だ。

中村晃一(なかむら・こういち)/大学卒業後、メガバンクに入行。2001年に楽天入社。楽天市場営業本部長、楽天トラベル常務執行役員を経て、現在、楽天上級執行役員ペイメント事業ヴァイスプレジデント。今年4月から楽天ペイメント社長就任予定(記者撮影)

楽天グループでは銀行、保険、証券といった(金融)事業を抱え、フィンテックグループカンパニーとして運営しているが、この中でスマホ決済は特に注力している分野だ。スマホ決済は、従来の金融サービスとネイチャー(性格)が違う面がある。現在行われているスマホ決済各社のサービス合戦を見ていると、単なる決済サービスだけではなくそこにマーケティング要素が入ったり利用者とのコミュニケーションが入ったりと、各社は付加価値を足していこうとしている。(売り切りに近い形の)従来の金融事業に対し、(サービス提供後も工夫が必要となる)スマホ決済を本腰入れてやるには、新会社でしっかり取り組む必要を感じている。

4月に発足する楽天ペイメントの従業員数は1000人弱。サービスは主に4つで、「楽天ペイ」と「楽天エディ」(電子マネー)、「楽天ポイントカード」(リアル店舗での買い物に利用できるポイントカード)、「楽天チェック」(リアル店舗への来店に対しポイントを付与するアプリ)が入る。今は「楽天カード」なども私が担当しているが、4月からは楽天ペイメントに専念する。

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