大学入試"新テスト"採点基準の恐るべき曖昧さ

「50万人の答案」は"公平に"採点できるのか

低学年の場合は、問題も解答も単純で解答の文字数も少ないので、それほどでもありませんが、高学年になればなるほど、問題も解答も複雑になり文字数も増えるので、こういうことがよく起こります。なぜそこまで気をつかわなければならないのかというと、テストの採点では公平性が絶対条件だからです。

さて、このような経験を基に、私が今心配しているのは2021年1月に初めて行われる大学入学共通テスト(新テスト)のことです。これは、これまで行われていた大学入試センター試験にかわって新たに導入される大学の共通入学試験です。私が心配しているのは、今までの大学入試センター試験ではすべての問題がマークシートによる解答でしたが、新しい大学入学共通テストでは国語と数学において記述式問題が出されるからです。

2018年に行われた試行調査(プレテスト)の問題はこちら。

その中で国語の問題は、記述式問題が3つ出ています。

そして、国語の記述式問題の採点基準がこちら。

誤字・脱字の基準一つを取っても、徹底するのは難しい

一目見ればわかるとおり、記述式問題の採点基準は非常に複雑です。なぜなら、記述式問題の採点ではただ単にマルかバツかで終わることはできず、部分点をつける必要があるからです。でも、私は、このように複雑な採点基準を設けても、それでも判断に迷う微妙な解答はたくさん出てくると思います。

そして、この採点基準をパッと見て心配になるのが、採点基準の注意書きのところに、「(注) 正答の条件を満たしているかどうか判断できない誤字・脱字があった場合は、条件を満たしていないこととなる」と書かれていることです。実は、この誤字・脱字の判断がけっこう難しいのです。

例えば、「木」という字の2画目がはねてあった場合や、「天」の2画目が1画目より長い場合などは、どうでしょう? これらは本当は誤字ではありませんが、誤字だと判断する採点者が出てくるかもしれません。

あるいは、「達」のつくりのほうの横棒線を3本でなく2本にしてしまうとか、「描く」の草冠の下を「田」でなく「由」にしてしまう、などといった受験生がいるかもしれません。これらはもちろん誤字ですが、「これくらいはいい」と判断する採点者と「これはダメ」と判断する採点者に分かれるかもしれません。

または、「熱」の「れんが」の部分を急いで書いて行書体のようになった場合、「これくらいはいい」と判断する採点者と「点が4つないからダメ」と判断する採点者に分かれるかもしれません。このように、誤字・脱字の基準一つを取っても、徹底するのは難しいのです。公平性を確保しようと思えば、誤字・脱字の基準も作っておかなければなりませんが、簡単なことではありません。

さらによく見ると「正答の条件」がかなり曖昧だということにも気づきます。曖昧でないのは、問1「30字以内」、問2「40字以内」、問3「80字以上、120 字以内」という字数だけで、その他の「正答の条件」は「○○○が書かれていること」などとなっています。これは、つまり、「○○○が書かれているか否か」を判断するのは採点者に任されているということです。でも、実はこの判断が難しいのです。

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