「何をやらせたい?」という問い自体がおかしい
ある雑誌の企画で子どもの習い事についての座談会がありました。4、5人の親たちが習い事について思うことや悩んでいることについておしゃべりして、私がときどきコメントするという形です。
参加者の間で、まず次のようなやりとりが行われました。「お宅は何をやらせたい?」「うちは将棋がいいかな。この頃、藤井聡太くんがプロとして大活躍してるよね」「うちは卓球をやらせようかな。だって、伊藤美誠ちゃんとかすごいじゃない」……。
私はそれを聞いていて、「あなたのお子さんと藤井聡太や伊藤美誠に、一体どういう関係があるんですか?」とツッコミを入れたくなりました。まったく関係ないですよね。メディアで大きく取り上げられ、世の中のブームになっていますが、子どもとはまったく関係ないことです。それが、子どもの習い事を決める判断材料になっているわけで、これはとてもおかしなことです。
そもそも、「何をやらせたい?」という問い自体がおかしいです。これは、今の日本で「習い事は親がやらせたいことをやらせるのが当たり前」と考えられていることの証拠です。本当は、子どもの習い事は子どもが主人公でなくてはならないはずです。つまり、子ども本人の興味・関心や向き不向きを基に決定されるべきものなのです。それなのに、本人はないがしろにされて、親の意向が優先されています。
これからありそうなのは、オリンピック関係のものです。オリンピックで○○が盛り上がったから○○をやらせたいとか、□□で日本人がメダルを取ったから□□をやらせたいなどと考える親がたくさん出てくると予想されます。
親の意向のもとになるのは、世の中のブーム以外にもいろいろあります。例えば、「自分が子どもの頃○○をやっていたから子どもにもやらせたい」「自分は□□をやりたかったのにできなかったから、子どもにはやらせたい」「東大に入った子の多くが△△をやっていたそうだからやらせたい」「ママ友が○○はいいと言っていたから」などです。
こういったことはすべて子ども本人の興味・関心や向き不向きとは関係ない、親の勝手な思い込みであり、はっきり言えば妄想です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら