多くの親が「子どもの習い事」でしくじる理由 藤井聡太くんや伊藤美誠ちゃんは関係ない

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子どもにとっては迷惑な話です。もともと好きでもなくやる気もないものですから、子どもが積極的にやる可能性は低いですし、そこに才能がある可能性も低いです。すると、上達もしませんし親や指導者から叱られることも増えます。自信もなくなりますし、鬱屈とした気持ちで過ごす時間も増えます。

もちろん、嫌と言わずに頑張り続ける子もいますが、その結果、燃え尽き症候群に陥ってしまったり、自分がやりたいことがわからない状態になってしまうこともあります。それについてはこちらの記事も参照してください。

子ども自身を主人公にする2つの方法

ですから、子どもの習い事を決めるに当たっては、子ども自身を主人公にするという姿勢が大事です。具体的には、2つの方法があります。

まず1つ目は、日頃の子どもの様子をよく観察することです。そうすると、子どもの興味・関心や向き不向きが見えてきます。

例えば、大阪市在住の石井さん(仮名)は、長男がNHKの「おかあさんといっしょ」や「おとうさんといっしょ」などの番組が大好きで、テレビを見ながらよく踊っていることに気づきました。それで、石井さんはYouTubeでいろいろな歌とダンスの動画を見せてあげました。すると、息子はとても喜んで、それを見ながら踊りまくっていました。

気をよくした石井さんが、歌とダンスの動画DVDを買ってあげると、それを見ながらますますよく踊るようになりました。次はどうしようかといろいろ調べた結果、市内にリトミックの教室があることがわかったので、そこに通わせました。今、その男の子はリトミック教室に毎回楽しく行っているそうです。

また、福岡市在住の小川さん(仮名)の次女は、はさみで紙を切って遊ぶことが大好きです。最初、小川さんはゴミばかり増えるのが嫌だったそうです。でも、子どもをよく観察していると、はさみで紙を切っていろいろな形をつくるのが楽しくてたまらない様子でした。それで小川さんは「たくさん切れたね。いろいろな形があって楽しいね」と褒めました。そして、さらに新聞紙、チラシ広告、雑誌などを与えて、思う存分切らせてあげました。

あるときは丸い形に切ることにはまって、丸い紙ばかりが大量にできました。その次は、ハート型にはまり、ハート型の紙が大量にできました。最近、折り紙や色画用紙を買ってあげたら、色がきれいなのでますます張り切るようになりました。そのうちに、いろいろな形に切った紙を空き箱や空き缶に貼りつけて、オブジェのようなものを作り始めました。

小川さんは次のように言っています。「これでテストの点が上がるとかはもちろんないですし、美的センスがよくなるとか、図工の成績が上がるとか、そういうこともとくにないかもしれません。でも、とにかく本人が楽しそうなので、それでいいのかなと思って応援しています」。そして、試しに、工作教室のようなところに行くのもいいかもと考えているそうです。

私は、石井さんや小川さんの姿勢は、すべての親たちが見習うべきものだと思います。親の勝手な思い込みや妄想を優先することなく、子ども自身を主人公にして、その興味・関心や向き不向きを応援している点がすばらしいからです。

そして、親の応援の延長線上に習い事がくるなら、上手くいく可能性が大きいといえます。せっかく子どもが好きなことを見つけても、親の応援がないと子どもはその分野を伸ばすことができません。褒めてももらえないし、必要な物や情報も得ることができないからです。これはもったいない話ですよね。

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