アマゾンの超速配送を支える“逆転の発想” ロボットで2~4倍の処理が可能に

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要は、これまで商品中心主義で運営されてきた配送センターを作業員中心主義にすることによって、人間の作業の無駄を省き、その代わり疲れを知らないロボットに延々と働いてもらおうというわけだ。発想の逆転とは、こんなことを指すのだろう。作業員の仕事はこのロボットによってかなり効率化され、これまでの2~4倍の発送ができるようになるという。

もちろん、キヴァ・システムズのロボットをうまく動かすためには、優れたソフトウエアが必要だ。倉庫の中では、何十台、何百台というロボットが走行しているのだが、決して互いにぶつかることはない。ロボットが読める信号を配したシールが床にグリッド状に張られており、何百台のロボットがいても、それぞれが空いたシールを目指して走行する仕組みだからだ。

注文に従って、どのロボットがどの棚を取りに行くか、どの作業員の元へ届けるかも指令される。その指令によって、間違いなく正しい棚が正しい作業員の元へ運ばれて来る。

そして、作業員の手元では、複数の注文を一度に箱詰めすることができる。というのも、やってきた商品のバーコードをスキャンすれば、入れるべき箱のランプが点灯するという仕組みになっているからだ。いちいち注文内容を確認しなくても、すべてはソフトウエアがやってくれるというわけだ。

キヴァ・システムズがアマゾン以外にも、オフィス製品、デパート、日用品などの配送センターで広く使われているのは、逆転の思想によって考案されたこのロボットとシステムが、これまでの面倒な作業を大幅に軽減し、間違いも少なくしてくれるからである。

資金集めに苦労した過去

今では、こんなに評価されているキヴァ・システムズだが、マウンツが創業しようとしたときには、資金集めに苦労したという。ベンチャーキャピタル会社が多く集まるシリコンバレーのサンドヒル・ロードにもやって来て、アイデアと技術をプレゼンテーションして回ったが、軽く50件は断られたという。

ようやく集めた資金を大切に使いながらロボットを開発した。そして、一つひとつ段階を経ながら、これまで着実に前進してきた。当初から6~7年先のロードマップを描き、すべてを一度に完成させようとするのではなく、つねに改良を重ねるという考え方で会社を運営してきたようだ。

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