ホリエモンが、今どうしても伝えたいこと 堀江貴文氏インタビュー(上)
これまでのイメージと違う理由
――堀江さんの新刊『ゼロ』を読みましたが、今までの堀江さんのイメージとかなり違うと感じました。
堀江:これまでは、「いいことを言っていたら伝わるだろう」「伝わらなくてもわかってくれる人だけわかってくれればいい」というスタンスでいたのですが、それじゃダメだと気づいたのです。実際には本意とまったく正反対に受け取られることもあって、伝えたい人たちにも伝わらないし、痛い目にも遭う。伝えたいことがあるなら、もっと誠実に伝えないといけないと思いました。
――これまで自分のPR戦略やブランド戦略を、考えたことはなかったのですか。
堀江:全然、考えたことがないですね。
――ムダだと思ったからですか。
堀江:相手がわかるべきだと思っていた。でも、なかなかわかってもらえなくて……。
――米国の場合、経営者はPRの専門家を使ってカリスマ的なオーラを演出したりもしますが、日本の経営者の場合、そうしたブランド戦略に疎い傾向があります。
堀江:僕の中では正直、そこまでつくるのは窮屈じゃない?という思いがあります。でも、そうしないと伝えたいことが表面だけで止まってしまうので、もっと真剣にやらなければいけないのでしょう。少し上目線に聞こえてしまうかもしれませんが、僕もみんなに歩み寄らなければいけないし、みんなも僕に歩み寄ってほしいと思っています。
――『ゼロ』には、堀江さんを嫌ってきたオジさんたちが、堀江さんを好きになるようなエピソードが多く記されています。
堀江:僕が歩み寄ったのは、そういう苦労エピソードを初めて明かしたことです。ただ、あまりにもドロくさい方向に行きすぎると、「努力にこそ価値がある」「結果なんかどうでもいい」みたいな極論になりがちなので、努力賛美や労働賛美になりすぎないように、表現を注意しました。すごく微妙なバランスで書いています。
――新聞配達の話やご両親の話、モテなかったエピソードなどをオジさんたちが知っていたら、受けも違ったでしょうね。
堀江:でも、そういう自己プロデュースはしたくなかったですから。
――地方から東京に出てきた人は、堀江さんとレベルは違うにしても共感する部分があると思います。刑務所で読んだ1000冊の本の中で、重松清さんの小説『とんび』に号泣したそうですね。
堀江:あれは泣ける話ですよ。まあ、地方出身者にしかわからないかもしれない。でも、僕はあの小説の息子みたいに「いい子」にはなれないですが。