ホリエモンが、今どうしても伝えたいこと 堀江貴文氏インタビュー(上)
――堀江さんのいろいろな面を引き出したという意味でも、編集者の力は大きい。
堀江:そうですね。彼らの熱は、僕を大いに刺激しました。
まず「Me、We、Now」の骨格を考えて、そこにエピソードを書き足していった。「Me」の話は、幼少期から大学に入るぐらいまでのエピソード。そこで、まず堀江貴文という人間を知ってもらう。「We」の話は、働くことで世の中と接点を持ったエピソード。僕と読者の共通点が、働くことですよね。大学のときに引きこもり同然で、競馬や麻雀にハマッていた自分から抜け出すきっかけになったのがアルバイトでした。社会に出ていくための、みんなとコミュニケーションを取るための道具が、働くということだった。それを自分で文章化したことがなかったのですが、彼らがそれを発見してくれたのです。
――大学時代にヒッチハイクで全国各地を回ったエピソードも印象的でした。
堀江:そうです。「一歩踏み出す」象徴として、ヒッチハイクのエピソードは大切にしています。
――堀江さんは、自分の考えを多くの人に伝えて、人々のマインドを変えたいのですか。
堀江:そうすれば社会全体がよくなるでしょう。自分だけが幸せになったって、それは本当の幸せではない。本当の幸せって、たぶんみんなで幸せになることですよね。
――堀江さんのそうした考え方は、世の中にあまり伝わっていません。
堀江:それは完全にマスコミの世論誘導ですよ。僕は2004年に近鉄バファローズの買収に乗り出したときからメディアで取り上げられるようになって、そういうキャラクターで売られていった。最初は、みんなのために球団を減らさないということで、「救世主」とも呼ばれていましたから、そのままのイメージでいけば問題もなかったのでしょうけど。
――テレビ局を敵に回して……。
堀江:そこに尽きますね。
――今、テレビに対してどういう思いを抱いていますか。
堀江:いや、そもそも僕は恨みの感情とかがない。単純にないのです。
――裏切られても疑心暗鬼になったりしないのですか。
堀江:疑心暗鬼になってもしょうがないじゃないですか。大学生のとき、先輩と口論になって「おまえ、人の心がわからないのか!」と言われて、「人の心なんてわかるわけないでしょう!」と言い返したエピソードを書きましたが、究極的には人の心の中なんてわからないので、どうせだったら、相手は自分をポジティブに思ってくれていると信じたほうがいい。
人間って、人に対して正の感情と負の感情がグラデーションになっていると思うのです。グラデーションのいいところだけを見たほうが幸せですよね。悪いところを見だしたらキリがないし、みんな欠点の塊に見えちゃいますよ。
僕、刑務所に入って思ったのは、刑務所にいる人たちって極悪人の集団だと思われているでしょうが、全然そんなことはなくて、むしろ普通の人なのです。ちょっとしたきっかけで犯罪に手を染める。人間って弱いなあと感じます。